平凡 | ナノ

悩んでいるのは [1/15]


あの日から、切原くんと紳士は私に近づかなくなった。というか、単純に以前の関係に戻っただけではないか。アイドルテニス部と関わりのない立海の一生徒。それでも専属カメラマンはクビにはなっていないようなので、完全に戻ったというわけではないけど。


「私がこうだからいけないのか。やっぱり、嫌でも“きゃーっテニス部よ素敵〜!”って言ってれば良かったのかな」

「キモ」

「うっさい美佐」

「始まっちゃった関係は、なかなか消えないと思うけどね」

「なにそのドロドロ感」


学校帰りにファミレスへ寄り、美佐と二人でテスト勉強。家だとやはり誘惑物が多いこと、学校の図書館は埋まっていたこと、あと会話をしながら進めたかったことからファミレスを選んだ。


「そんなこと言ってさ、寂しいんじゃないの」

「まさか」

「志眞がテニス部と関わり始めてまだそんなに日は経ってないけど……あの2年はかなり懐いてるよね」

「あああああ」

「なに、信じたくないって?」

「……たしかにさ、可愛いとこもあった。だけどこれからの学校生活を考えると、突き放しておくべきと思って」


そう、自分のために。
ズズズとストローで残り少なくなったカルピスを吸い上げる。

寂しい、か。そりゃまあ、次の日から関わりなかった頃の関係で、まるで私は知らない人みたいになったんだなと思ったら少し寂しかったけど。でもそれじゃあダメでしょ!


「まあいいよ、あたしには関係ないし」

「ひど!」

「相談するならさ、ほら、志眞の良き理解者だっけ……青りんご?に相談すれば」

「ああ……うーん、そうだね」


そっか。そうしてみよう。
私の学校生活にまったく関係のない、第三者から見てこの判断はどうだったのかを率直に言ってもらえたら、何か変わるかもしれないし、これ以上うじうじする必要もないかも。


「志眞、」

「ん?」


「悩んでる時点で、アウトだから」

「えっ」

「テニス部と関わりたくない、そういう思いが強いなら悩む必要なんてないよね。相手がどんだけ傷ついていようがこっちは関係ない。そうでしょ」


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