優しさは必要なの [25/26]
次の日の月曜日、教室に入りすれ違うクラスメートや、席に辿り着くまでに座っているクラスメートにおはようと挨拶をしながら自席へ向かった。
「ジャッカル、おはよう」
「はよ」
「私が帰った後、美佐と裕斗どうした?」
「そりゃすぐ帰ったぜ」
「だよね」
結局あの後は赤也とブン太に奢らされるし散々だった、と言うジャッカルの表情は昨日の疲れがまだ残っているようだった。
「あいつらの話だと、最初は幸村と柳と一緒にいたらしいんだとよ」
「……へぇ」
「勉強教わるならそっちに教わっとけよって感じだよな。どうして俺に」
「めっ面倒見がいいからだよ!」
「俺がか?」
「そう。だから、きっと切原くんも年‥丸井くんも甘えちゃうんだよジャッカルに」
そう、体験者は語る、だ。
もちろん教えてくれたことには変わりないんだけど、ジャッカルのような優しさは皆無。幸村くんは「そんなこともわからないの?」って目で見てきたし、柳くんは教え方が難しすぎて逆にわからなかった。ごめんなさい。
そして鞄を開けた私は愕然とした。水筒持ってくるの忘れた!
仕方ない今は時間もないし水道水を飲むしかない。
タタタッと駆け足で廊下へ出て、目の前の水道の蛇口を捻る。飲む前に水に触れてみたが、当然、温い。ですよね。蛇口を上向きにし、顔を近づけてごくりと音を立て喉に通す。
「うう、ほんとまずい……」
「丈が短いぞ、柿原」
「え」
「聞こえなかったか。スカート丈が短いと言っているのだ。直せ、今すぐだ!」
げええええ、老け顔きた!
なんで。老け顔はA組だよね、どうしてわざわざI組付近の廊下にいらっしゃるの。今日って風紀取り締まり日だったっけ!?
「これでもひとつしか折ってないんだけど」
「ひとつも折るな」
「えええ」
「…………」
「ごめんなさい戻します」
「ふん。最初からそうすれば良いのだ」
腕を組み満足そうな表情を浮かべる彼は、本当に教師みたいだった。
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