親友ですから [21/26]
あれから日は経ち、これから待ち受けるテストに向けて集中しているのか、3年生はみんなピリピリしていた。他人事のように言っているけれど、私もピリピリしているよ!
「あああああっ!」
「な、なんだよ急に叫ぶなよ」
「だってわからない。なんなの、やっぱり数学考えた奴死んじゃえ」
「すでに亡くなってっけどな」
そうだった。内心で舌打ちをし、再び公式に当てはめて問題を解いてみる。しかし何度やっても同じところで躓くのだ。優しい優しいジャッカルに教えてもらっているのだけれど、理解できていないからチンプンカンプンだ。ちなみにお昼休み中です。
ブーッ、ブーッ
「ああもう、誰よこんな時に!」
ポケットの中で震える携帯を取り出し、ディスプレイを見ればメール受信の文字。
どうせ青りんごだ。いや、どうせ……なんて言い方はひどかった。でもあれなんだよ、続けられてるのはいいんだけど、最近苦痛に……げふん。
「メールなんて後で見れるだろ。教えてやらねえぞ?」
「! す、すみませんジャッカル先生!」
「プッ、なんだよ先生って」
眉尻を下げて笑うジャッカル。なんだかんだでイケメンに違いない。見た目も(黒いけど)良し、頭もそこそこ良し、性格はほぼ満点……もしかしてテニス部で一番のイケメン!?
「あらあら仲のよろしいことで」
「美佐!」
「おまえ……おばさん臭いぞその言い方」
「失礼な。それよりなに、勉強会?それならあたしも誘ってよね。知らなかったから違うクラスに遊びに行っちゃったじゃない」
「別に勉強会ってほどじゃねえよ。なんなら、今度どっか集まってやるか?」
「それいいね!」
「賛成!ファミレスで涼みながらやろうよ」
ファミレス、の単語にいち早く反応したのはジャッカルだった。さては奢らされると思っているんだな不憫な奴だなぁまったく。
「勉強教えてもらうんだし、こっちが奢るよ」
「ほんとか!?いや、でも」
「いいのいいの、どうせドリンクバーだけだもん。ね、いいよね、美佐」
「もちろん。あたし達をテニス部の連中と同じだと思わないでほしいわ」
「志眞ちゃー……んん!?」
ケラケラ笑いながら、じゃあいつ勉強会しようかと話していれば、どうやらうるさいのが帰って来たようで。
名前を呼ばれたのでドアの方へ視線を向ければ、飛び出るのではないかと心配になるくらい目をくわっと開けている裕斗がいた。こ、こわい。
「ジャッカルてんめえええええ近すぎだ!!」
「うおっ」
あ、そうか。今まで勉強教えてもらっていたから何気に距離が近かったんだ。今にも飛びかかるのではないだろうかという勢いでこちらに駈け寄る裕斗は、思いっきりジャッカルを椅子から蹴落として我が物顔でそこに座った。
「で、何してたんだよ!」
「勉強教えてもらってたの。ひどいよ裕斗」
「べっつに。ここは俺の特等席だし当然の行為をしたまでっつーか?」
「そこは俺の席だぞ星沢!!」
「え、聞こえなーい」
うざい。
恐らくここにいる3人思っていることは一緒だろう。顔が引きつっている。でもまあ、ここで裕斗を仲間外れにするわけにもいかないし、私達は今度の勉強会のことについて話してあげた。
これでもほら、親友だからね私達。
← →
(しおりを挟む)