平凡 | ナノ

話題に出したからと言って [20/26]


I組は、結局後ろから3番目の成績だった。

そりゃあそうだ。ドッジボールは第一試合で完敗だし、バレーボールもあんまり、サッカーも散々な結果だった。まず幸村くんのいるクラスとぶち当たっていたのがすべてを物語っている気がする。彼はテニスだけでなくサッカー含め、スポーツは本当に何でもできちゃうんだな。


「ボロボロだったのは間違いないけど、球技大会お疲れー!」


かんぱーい、と各々グラスを持ち上げて近場の子とグラスを触れ合わせてから飲み物を流し込んだ。もちろんジュースだ。ちなみにとあるクラスメートのお宅にお邪魔させていただいている。とても広い家で、同じクラスになれば、行事終わりの打ち上げにここが使えるという贅沢な1年間を過ごせるのだ。


「志眞の逃げ回る姿、見たかったなあ」

「あれは見なくて正解だから!てか、外野に出た子達協力する気なかったでしょ!?」

「や、だって志眞ちゃんと星沢くんが面白いからつい、観客気分に」

「そんな気分になるな!」


球技大会は三種目あったはずだけど、なぜか話題はほぼドッジボールだった。私の逃げ回る様とか、裕斗の必死さとか、そればかり話されている。なにこれ羞恥プレイすぎでしょ。

とりあえずどこかひっそりと静かにいれる場所はないだろうかと、私は立ち上がって周囲を見渡した。すると、端っこの方にジャッカルが見えて。人がいないわけではないけど、ジャッカルなら違う話ができそうだと思い、床に散らばる荷物を踏まないように移動した。


「よっ、ジャッカル」

「おう。志眞か、球技大会お疲れ」

「そっちこそ。幸村くんと試合してたね」

「あいつ化け物だぜ、ははは」


「ねえジャッカル」

「ん?」


言いながら苦笑するジャッカルの横に座れば、ここに居座るとは思っていなかったらしく、一瞬目を見開いた。いや、戻ると思われていたのにびっくりだ。


「エ……間違えた、仁王くんってさ」

「(何を間違えたんだよ)あー、仁王がどうした」

「うん。あの人って意外と優しいんだね」

「は?」


「まさか指摘されるとは思わなくてさ。直した方が私のためぜよーって言ってくれてね……呼び方は改めることにしたけど、でも、あいつはエロ担当で間違ってないよね!?」

「し、知るかよ……」


知らないわけないでしょ!?
プライベートのこと何でも話すわけじゃねえし!
でも女関係ひっどいじゃん!
そんなの噂だろ!?


ぎゃあぎゃあぎゃあ


と、なぜかジャッカルと仁王くんのことで揉める始末。周囲に座っていた子達はいつの間にか少し距離を置き始めていて、じわじわと刺さる視線に気づいた私達はハッとして大人しくジュースを飲んだ。


「……、」

「……おまえ、仁王と仲良くなりたいのか?」


「バカ。なんでそうなんの。」

「話題に出すから」

「球技大会の話はしたくなかったから!」


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