平凡 | ナノ

集中狙いも程々に [18/26]


ピーッ‥!!

審判の笛の音とともに、ボールが高く上げられた。お願いだ(I組で一番背の高い)笹本くんボールをゲットしてくれ!


バシンッ

「よっしゃ、笹本ナイス!」

「おう!」


私の願いが通じたのか、笹本くんは見事ボールをこちらのコートへ叩き入れてくれた。危うくそのボールにぶつかりそうになった、なんて恥ずかしい立場にいたのはこの私だが、そのボールをキャッチしたのは裕斗で。さっそく守っていただいてしまった。


「そんじゃあやっぱ、丸井と仁王は外野に出してやらねえとな」


「えええええええ!」
「そんなの絶対にさせないんだから!」
「丸井くんと仁王くんは守る!」


さっそくブーイングの嵐である。女子の恐ろしい眼差しに一瞬怯んだ裕斗だったが、すぐに鋭い視線に切り替えあの二人に狙いを定めていた。


「見てろよ志眞、俺のかっこいい姿を!」

「……うん、見てるね」

「よっしゃああああやる気出た」


まさか自分で「かっこいい姿」とか言っちゃうとは思わなかった。乾いた笑みを零しながら裕斗の傍を離れれば、I組の男子に変な目で見られた。ちょっと待って、なんで私をそんな目で見るの!?むしろその目は裕斗に向けられるべきやつだよね!?


「おーし、かかってこい星沢」

「おまえらなんて一発だぜ」

「まさかダブルアウトでも狙っとるんか、俺が当たるなんてあり得んぜよ」


そしてあちらもやる気満々の様子。へえ、あのエロもあんな顔するんだ……今まで見たことある表情と言えば、やる気の無さそうな冷めたやつだったから意外。



「やだ、仁王くん……可愛い!!」

「あんな顔初めて見た!」


私の着眼点も、なんだかんだ女子と一緒だったことに苦笑いせざるを得なかった。





そして――――


「これはどういうことだろうね裕斗!?」

「え?……へへっ」

「へへっ、じゃないよバカ!ほらもう最悪な展開待ってたよ!」


あれから数十分後、I組のコートには裕斗と私の二人しか残っていなかった。
別に逃げ回っていたわけではない。できることならば早く当たって外野行ってそのまま適当にやり過ごすつもりでいたのに、あいつが取るんだもん。絶対にこの俺が死守するー!とか言って、今まで、全部。

そのくせあいつが狙うのは年上とエロばかりでしょ。そりゃ他の子当たるわけないよね。少しは当たってるけど、B組コート8人も残ってるんだけど。ねえ、4倍だよ!


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