平凡 | ナノ

ラブラブのちチクチク [17/26]


試合開始数分前。
B組とI組はお互い狭いコートの中に入ってとりあえず外野決めからスタート。必ずや外野に行ってやる……そうすれば裕斗に守られることもない。あ、でも内野が少なくなればコートに入らなきゃいけないんだっけ。うーん。


「じゃあ、外野やりたい人手挙げてー」


ザッと5人が手を挙げた。しかも女子。もちろん私も含まれている。やっぱり怖いもん、男子と一緒にドッジボールなんて!


「やだ、志眞ちゃんは内野でしょ?」

「ええっ!?」

「だって絶対強いじゃん」

「どこ見て判断してるの!?そりゃ体育は人並みにできるけど、男子と張り合える自信は―」


「ダメだ志眞は内野!俺が守れねえだろ!!」



はい、じゃあ志眞ちゃん外野候補から外すね。


あああああ、なんでこうなった!さっそく私抜きで外野を決めていくという悲しさ。隣を睨めば「よし言ってやったぜ」的な満ち足りた表情をしたバカ裕斗。


ゲシッ

「いたっ」

「バカアホハゲ」

「禿げてねえ」


なぜそこだけ反応したの。ジトっとした目で見やれば、ジャッカルと同類にはなりたくないと言われた。可哀想でしょジャッカルが。
ああもう、今年の球技大会はとことんついてない。はあとため息をついて相手コートへ視線を向ければ、バチリと音がしたかのようにエロ担当と視線がぶつかった。咄嗟に逸らしました。

え、なに、見られてた!?……いや、自意識過剰だね。
エロが私を見ているわけがない。そうだそうだ、I組には可愛い子いるもん、その子見てたんだ。



「てか、すげえなB組」

「うん。あの二人がいるからね、女子の視線が全部集まってる気がする」

「これ勝てるかもな」

「いやーでもこっちの女子も」


なんて裕斗と話していれば、どこからか「柿原」と呼ぶような声が聞こえた。気のせいだろうか。裕斗に聞いてみても何も聞こえなかったと言うし。いやでもあんた何か睨んでるね?

彼から視線を外し、そちらへと向きを変えれば真っ赤な髪。


「やっと見た!」

「……いま、呼んだの?」

「おう」

「なぜに」


「ぜってえ、当ててやっから」


覚悟しとけよ、ニッと白い歯を見せて年上はそんな爆弾的セリフを投下した。
途端に湧き上がる黄色い声とともに、今まで年上やエロに向かっていたラブラブ視線が、私へのチクチク視線へと変わった。ふざけるな!!


「なに勝手なこと言ってくれてるんだよ。
絶対、志眞はおまえらなんかに当てさせねえ!死守するのはこの俺だ!!」


な、何を言ってるんだこいつもー!たかがドッジボールで熱くなり過ぎだし、それにエロは一言も私を当てるなんて言ってないのに複数形にされたことに驚いてるよ!あのエロ担当が!


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