平凡 | ナノ

無駄に燃える彼の心 [16/26]


やってきました球技大会。
見事じゃんけんに負けてドッジボール組に回されてしまったけれど、放課後残って練習をすることもなかったので非常に楽だった。
しかし本番が地獄っていう。軽く身体を動かしながらグラウンドを見渡せば、たくさんの男子と少しの女子しかいなくて。それもそうだ。女子競技のバレーボールは体育館で行われるので、必然的に女子が消えるのである。


「よし、今日は絶対志眞を守り抜く!」

「え、やめてよ。最後のひとりになってバカみたいに逃げ回るとか恥ずかしいじゃんか」

「そんな志眞が見てみたい!」


「ほんと黙っとけば。」


なんだこいつ実はSなのかとギロリと睨んでいれば、放送が入るのか、ザザザという耳障りな音が耳に入り込んだ。


『あーあー‥、ドッジボール第一試合、B組とI組を始めるのでコートに集まってー』


そんなアナウンスが聞こえたので、私と裕斗は移動することにしたんだけど、コートに着くまでの間に見るわ見るわ、やけに張り切っているB組の女子。そんなに勝利に拘るようなクラスには正直見えないのだけど何があった。ご褒美でもあるんだろうか。

そしてコートに着くまで残り数歩のところで、前方からI組の子が興奮状態で走って来た。


「志眞ちゃんっ」

「ど、どうしたの、やけにテンション高いね」

「どうしよどうしよー!!」

「なにが」


「B組のチームにね、丸井くんと仁王くんがいたの!」


思わず肩が震えた。
隣にいる裕斗からもそんな気配を感じ、視界の隅に見える拳がプルプル震えている。


「志眞、」

「は、はい」

「絶対負けねえぞ。んで、あいつらのボールは絶対に志眞には当てさせないからな」


ちょっと待ってやる気満々!?フンッと鼻息荒く、裕斗は先にコートへと入って行った。
でもこれでB組女子の気合の入り具合が少し違うことに納得できた。疲れそうだなという思いを抱きながら、視界に目立つ赤色と銀色を映し込んだ。


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