平凡 | ナノ

一発で決まる勝負 [14/26]


“球技大会 出場種目決め”


黒板にでかでかと書かれた文字を見て、ああもうそんな時期かと思った。そして同時にその後に襲い掛かってくる期末テストのことも思い出される、それが球技大会だ。


「今年は全部で3種目あります。女子がバレーボールで男子がサッカー、それから男女混合のドッジボールです」


学級委員長が丁寧な物腰で進行を進め、その間に書記がカツカツと音を鳴らしながら黒板に種目名を書いていく。さてどうしようかと教室中がざわつく中、裕斗が「どうする?」と声をかけてきた。


「混合は怖いからバレーボール一択」

「えええマジ?俺は志眞と一緒にドッジボールやりたかったんだけど」

「あんたの希望は聞いてない」


どうせサッカー組には入れねえしとボソボソ呟く。そうなのだ、なぜか経験者を数に含めずにチームを作れというのがお決まりなので、裕斗は自動的にドッジボールへと流れる。
とりあえず希望する種目に手を挙げてくださいとの声がかかったので、迷わずバレーボールで手を挙げたのだが。


「えっと、定員オーバーなので、女の子達は集まってじゃんけんとかして決めてください」


ぐるっと見渡せばほぼ全員が手を挙げていた。
バレーボールは2チーム作るため、この中から12人が生き残れる。なんとしてでもそこに入らなければ!


「負けた子は文句言わずにドッジボール。良いね?」

「うん」

「あああもうお腹痛い」

「じゃあいくよ、せーのっ最初はグーッ」


バッと一斉に出たグーの手。
これから3種類に形が分かれる……うわ、どうしよう、何を出そう。じゃんけんで一発負けと言えばチョキを出した時。結構、そのままグーを出してくる人って多いと思うの。たぶん。

よしここはパーを!!


「じゃーんけーん、ぽんっ」


「……はい、パーの負け」

「うそぉおお!?」

「志眞ちゃん、ふふっ、面白い」

「あんたはじゃんけん弱いもんね」

「美佐!くそ、チョキ出してるし!」


私を含め5人がパーで撃沈した。あいこすらなく。
残りの子達、みんなチョキ出してるとか、打ち合わせでもしていたんじゃないの。疑いの心は晴れることなく、ああああ、と魂が抜けたような声を出しながら自席へ戻った。

隣でケラケラ笑う裕斗が激しくムカつく。


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