平凡 | ナノ

写真部のほぼ全員 [13/26]


久しぶりに写真部の部室(空き教室)を訪れれば、同級生や後輩からの視線を一気に浴びた。


「志眞!あんた最近テニス部の写真撮ってるらしいじゃない!自然大好きっ子だったのにどうしたってのよおおお!?」

「うおおお、部長、目回る」

「見せなさいよ」


言うと思いました。

私の肩をガシッと掴みぐわんぐわん揺らす写真部部長の形相はもう必死そのもの。え、そんなにテニス部の写真って貴重なの?いや、まさか……。


「ねえ、まさかファンクラブ入って」

「もちろん」

「ええっ初耳だよ!?」

「だって志眞聞いてこないじゃない。ちなみに、結構いるよ」

「恐ろしい」


ようやく揺さぶられ攻撃から解放され、ふらふらする頭を押さえながら近場の椅子に腰を下ろす。そうして調査をする。テニス部ファンクラブに入っている人数を。


8人があの魔王。

6人があのエロ。

6人があの年上。

5人があの美人。

3人があのわんこ。


写真部32人中28人が所属していたことが判明した。待て、多いな。


「よく荒れないね」

「うちら仲良しだし?」

「そういう問題か」

「それにしても、志眞だから許せる気がするんだよね」

「本当ですよ!これが仮にファンクラブに入ってる人だったら今頃リーダー達にボッコボコにされてますよ」

「うわぁ」


学校復帰できなくなりそう、なんて思いながらふと気づく。では今どうして私は普通に生活を送れているのだろうかと。

そんな考えを読まれたのか、部長がくすっと笑いながら「同情されてたよ」と教えてくれた。


「同情?」

「無理やりなんでしょ、カメラマンやれって」


経緯を知っていたなんて!!
誰かに教えたっけか、なんて疑問はこの際忘れることにして。なんだ!これなら学校生活びくびく震えて過ごす必要なんてないんだね!


「それでも過激派にはちょっと……」

「とくに仁王や丸井のね」

「あ、大丈夫だよ志眞ちゃん!私達たしかに仁王くんと丸井くんのファンクラブに入ってるけど穏やかな方だから恨んだりなんかしないし!」

「先輩のことちゃんとわかってますから!」


でも、過激派には気をつけてね。

そんな言葉が裏に隠れていることくらいお見通しですよみなさん。うん、やっぱり震えて過ごすことは避けられないのかもしれない。


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