平凡 | ナノ

自己紹介 [3/34]


「苦労話は聞いてあげるからね」


それ以外は受け付けない。と言って、私は指定された席に座った。そしたら星沢くんが隣の席に座りました……うわー、お隣さんなの?


「ひっで、その顔」

「なんとでも言え。私、ほんとは裕斗とだって関わりたくないんだからね」

「なんで!?」

「サッカー部ではモテるでしょ」


「うんうん。前から思ってたけど、どうして志眞のこと好きなの?めっちゃ普通じゃん、もっと可愛い子いっぱいいるよ」

「そうそう……って美佐!」


後ろからの声に思わず賛同したけど、それ褒められてるよりも貶されてるよね。

まあ、自覚はしている。
言われた通り、顔も体型も勉強もスポーツも全部人並み。とくに際立ってこれが得意とか不得意もない。ほんとに普通の人間。



「普通がいいんだよ。ああやってキャピキャピしてる女は大抵ミーハーだしさ」


だったら俺だけを真っ直ぐに見てくれる人の方が断然いいじゃん?と言う裕斗に、少しだけドキッとしたのは内緒だ。すぐに調子に乗る。

顔が良い奴からの真面目な発言は、心臓にとっても悪影響だ。





3年生という学年に上がってまでやることじゃないと思うんだよ。


「自己紹介やるぞー」


2年の時も同じだった担任の先生は、気だるそうにそんな言葉を漏らした。

廊下側の1番前の人から順番に簡単な自己紹介が始まった。え、趣味は読書?いやあなた、どう見てもテニス部見てキャアキャア言うのが趣味でしょ!去年目撃したよ!



頬杖を突きながらそんなことを思った。

大体、自分で言うのもなんだけど、ここまでテニス部に興味を示さない人間の方がこの学校では少ないと思うのだよ……もし私と同じような人間いたら、是非友達になろう。



「はい次、柿原」

「はい」


いつの間にやら回って来た順番に驚きながらも、椅子から立ち上がり当たり障りのない自己紹介をする。


「柿原志眞です。景色とか花とか生き物撮るのが好きだから写真部にいます」


最後に、1年間よろしくお願いします、と付け足して座った。

早く終わらないかなと思いながら、各々の自己紹介を耳に入れていた。どうせすぐに忘れちゃうけどね。


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