平凡 | ナノ

テニス部、楽しいね [12/26]


パシャ‥パシャッ

「志眞せんぱーい!」

「あー、消去」

「うわっ‥ひどっ!」


ベンチに座りながらテニスをしている彼らを撮っていたが、とうとう切原くんが思いっきり笑顔を浮かべてピースをしてきた。消去!

だからさぁ、作った笑顔嫌いなんだってば。


「おい赤也、真面目にやれよ」

「やってますよー」

「どこがだ。おまえさっきから柿原のカメラ意識しすぎだろぃ」

「そういう丸井先輩こそ、いちいちかっこよくポーズ決めてるっしょ」

「それはいつものこと」

「いや、今日はいつも以上っす!」


なんだなんだネット挟んで口喧嘩し始めたよ。

でもまあいいや、シャッターチャンス。こういう時こそ人間の良い表情が撮れるんだから逃がしちゃいけない。気づかれないようにピントを合わせて……。


パシャッ

「「あ?」」

「やだこわい不良顔」


ディスプレイを見てけらけらと笑う。

どうしよう、思った以上に撮るのが楽しい。テニス部を、というか人を撮るのが。
最初はファンクラブにびくびくしてたけど、撮り始めてしまえばこちらのものだった。集中して周りの音声が聞こえなくなるのは、こういう時はメリットになるんだな。


「何を笑っているのだ、柿原」

「あ、ふ‥真田くん」

「あまり活動に支障を」

「まあ良いじゃないか弦一郎。赤也達もいつも以上に楽しそうにしている」

「む。」


えええ、子供を見守る親みたいなんだけど。

真田くんはお父さんって感じの貫録あるし、柳くんは糸目だから微笑んでるお母さんに見えなくもない……うわああ、親だ、親がここにいる!


「柿原が何を考えているかわかる気がするのだが」

「ああ。俺達が保護者に見えると考えている確率100%だな」

「そんなに顔に出てた?」


「おまえはわかり易いな。それから糸目は余計な上に、俺はいつ性別を飛び越えたんだ」


そう言って今までずっと糸目だった目がカッと開いた。ぬわっ‥初めて瞳を見ましたー!ってか開眼すると恐ろしいと切原くんに聞いたことあるけれど、本当に恐ろしいんだね!?ブルッとした。あれ?てか、いま、心読んだ……?


「どうだ?人間を被写体にして」

「うん。楽しいかも」

「そうか、なら良かった」


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