平凡 | ナノ

突然流れ出した [8/26]


ようやく現像をした。
まだ少し温かい写真を手に持ちじっくりと見れば一目瞭然だった。私、被写体人間の方が上手に撮れてる。


……どういうことだ。
これじゃあ美人担当が言っていたことが本当になってしまうかもしれない。80%の確率だったのが、ほぼ100%になっちゃうかもしれない。


To:青りんご
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おはよう。
最近暑くなってきたね、夏だね。

スランプって怖いね
気持ちまで暗くなってきたごめん
朝からごめん
謝り過ぎだね私。慰めろ青りんご
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ピッ‥送信完了。

はあ、と深いため息をついてからその写真を鞄の中に入れて家を出る。そう、季節はもうすぐ夏。玄関を開ければむわっとした。




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「おっはよー志眞!」

「おはよう」

「……!志眞が素直に俺に挨拶を!?」


明るい笑顔で手を振ってくる裕斗に、挨拶(若干棒読み)を返したら予想以上に驚かれた。


「おい、大丈夫か?」

「うるさい」

「なっ‥おまえ、最近元気ないよな」

「そんなことないし」

「あるだろ。やっぱ、無理やり専属カメラマンとか押し付けたからか?」


ジャッカルがそれを気にすることないじゃん。
それはあのテニス部不良グループがやったことであり、責任を感じなければならないのもそいつらだ。

なのにさ、この人ほんと優しいんだよ。バカだよだから扱き使われるんだよ優しすぎるんだよジャッカル……!!




「うっ……」


「!?ちょ、志眞、なに泣いて……!」

「うううううう」

「え、悪い、俺気に障ること言っちまったか!?」

「何してんだジャッカル!?俺の志眞泣かせるとか何様だよ!」

「何様でもねえよ!いいから星沢も慰めろって……急に泣き出したんだよ」



男って、本当に女の涙に弱いんだね。

頭の中ではバカにした言葉がポンポン出てくるのに、目から流れる水は止まることを知らないようで。

ポケットでメールの受信を知らせているのか、携帯が震える。そんな中、私はHRが始まる前に美佐に連れられて保健室へと向かった。


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