スランプ発覚 [7/26]
私は一見バカなようにも思えるけれど、本を読んだりするのは好きなので図書館にはよく入り浸っていたりする。国語は点数良いよ!
静かな場所で自分のペースでゆっくりと本を読んでいる。ああ、私ってなんて勉強ができる子に見えるんだろう!
「……それにしても柳くん、邪魔」
「俺のことなど気にせず読んでいて構わない」
「無理です。というか、さっきからノートに色々書いてますけどまさか私のデータ」
「どうだろうな」
フッと微かに笑みを浮かべて再びノートにペンを走らせる美人担当。
見られているのかは定かじゃないけど、そうやって書かれてるってことは、見られているということであってかなり気が散る。美人からの視線はもちろん、周りの視線も。
「順調か?」
「え、なにが」
「写真だ」
「……うん、順調」
「嘘をつくな。最近すぐに帰宅していることくらい、全員知っている」
どうした専属カメラマン?
そう言って不敵な笑みを浮かべる美人さん……いや、そもそも嵌められたんだってば。いいじゃん帰っても。毎日撮るのも疲れるんだよ。それなのにきみ達の思い出写真って、体力的にも精神的にもきついんだから、専属カメラマンってやつから今すぐ引退させて。
「どうやら不調のようだな」
その言葉に眉がピクリと動いた。
「カメラを手にしていない日が増えている」
「ストーカーかよ」
「違う。データだ」
「変わらない。てか、そういう日だってあるよ……毎日撮る気なんて起きない」
「どうやら、スランプだな」
それ、言われたくなかったんだけど。
眉間にしわが寄った。睨むように柳くんを見た後、読んでいた本をぱたりと閉じて、そのまま机に突っ伏す。
彼の言う通りだ。最近全然上手く撮れない。シャッターを押してすぐに確認しても気に入らなくて消去。それが連日続いてるから、カメラも持ちたくないくらい滅入ってる。ああやだな、年上担当にプレゼントするはずの写真もまだ現像してないし……。
「思い切って対象を変えたらどうだ?」
「被写体を?」
「そうだ。おまえはずっと自然ばかりだっただろう、人間中心にすればスランプから脱出できる確率、80%だ。」
「それってテニス部を撮れって言ってるよね」
「察しが良いな」
それくらい誰にでもわかるってば。
てかなにその確率。どっから導き出した答えですか。80%とか意外と高いのがムカつく。思わず上体を起こしたけれど、また何かをノートに書き出す美人を見て、もう一度突っ伏した。もう、不貞寝してやる!
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