物語の続きを [27/34]
「ねえ、あんた怪しすぎるよこの前から」
「志眞、どうしたんだよ?いくらおまえ大好きな俺でも、ちょっと引く」
ガタブルガタブル……
い、言いたければどうとでも言え!
こっちは昨日、やばいことになっちゃったんだから怯えるのは当たり前なんだ!
頭上から降ってくる呆れたため息を耳にしながら、机の上に置いた鞄に顔を埋めた。
「で、どしたのマジで」
「昨日ね、一緒に公園で活動してたまではいいんだけど、志眞が新たな対象探してくるって言ってから30分もしないうちに真っ青な顔して戻ってきて。なんか、こっちは真面目に絵描いてたのに強制終了させられて……むかつく」
「その数分で何があったんだよ」
「知らない。教えてくれないの」
「怯えんのは構わねえけど、そうガタガタ震えながら頭抱えんのやめね?真面目に怖い」
言えるわけないじゃん。
決して口にも出したくない。テニス部の中で一番最悪な噂しか耳にしたことのない名前なんて死んでも言えない。恐ろしい、呪われる。
心の中でも言いづらいけれど、言おうか。
テニス部レギュラー3年
魔王担当“幸村精市”に昨日脅されたあああ!
あれからしばらく、「写真に収められてるんだから、お金くらい貰うの当然だよね?」「出せよコラ」「おい金出せ」と金金金金うるっさいからダッシュで逃げた結果、真っ青な顔で美佐の目の前に現れたというわけ。そのせいで治った足首少し痛かったよ。
顔、覚えられていないといいな。
一瞬向けたけどすぐ奴だとわかって逸らしたもん、大丈夫。
「なあ志眞……って、何してんだよ?」
「!?な、ななななにかな」
「どもり過ぎだろ。ああ、昨日さ、俺らテニス部のこと勝手に写真撮った奴がいるって幸村が言ってたんだが……なんか知らねえか?」
さあっと血の気が引くのが手に取るようにわかった。
「……知らない」
「ほんとうか?」
「なんで私にそんなこと聞くの」
「きっと写真部の奴だって幸村が言ってたからよ」
「(立海生ってことは決定事項!?)ふ、ふうん……後輩じゃないかな、テニス部大好きなのいっぱいいるから、きっと、熱が抑えられなかったんだよ」
「後輩、か」
こんのハゲ爆発しちゃえ!!
なにその疑り深い視線!私だって思ってるのかおまえ……ひどいっ、友達、いや、親友だと思ってたのに!
「違うだろおまえだろ確実に」
「!?なん、なんで急に強気なの!ジャッカルなんか消えちゃえ絶交だ!!」
「はぁ……言わねえから。おまえ、テニス部とは関わりたくないってずっと言ってたしな」
「なっ」
「ほら、言ってみろよ」
かっこいいとは思わないけど、爽やかにスマイルを浮かべるジャッカルに不覚にもきゅんとした。
やっぱり優しいなって!
テニス部で一番優しいのあなただけだよ!だから絶交なんて嘘ね!
「……ある日少女は被写体を求めて冒険に」
「え、なに。急に語り始めた」
「風景を撮り過ぎていた少女は飽きていました。もう少し違うのを撮りたい。そう思いふらふらとさ迷っていると、どこからかインパクト音が聞こえてくる。もうなんでもよかったのだ、何も動きのない風景でなければ、なんでも。そうしてその場に辿り着いた少女はカメラを構えた」
ああ、思い出すだけでも身の毛がよだつ。
「何枚か撮ったところで、背後から急に青年が近づいて来てカツアゲしてきました。少女は、怖くなりその場から逃げ出すのだった。このお話はこれでおしまい。続きはありません」
「よし、そんじゃあ行くか、続き作りに」
「はあ!?」
にかっと笑うジャッカル。今、私の頭の中では危険だと知らせる機械がピコンピコンと鳴っている。
「ジャッカルのくせに鎌かけた」
「優しいふりしてたんだ。志眞、ご愁傷様」
「俺だって可哀想だとは思ってたけどよ、幸村の怖さには勝てないぜ。放課後、行くぞ」
うわああああんやっぱりジャッカル最低絶交だ!
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