平凡 | ナノ

冒険の結果 [26/34]


青い空!緑色の草!広場だ!
子供がいっぱいだ!私も一緒に遊びたい!

……と、別にそんなにハイテンションなわけではないのだが。今、私と美佐は、お互いに写真を撮るのと絵を描きに地元の公園に来ている。割と有名な広い公園だ。

ボールを蹴って遊ぶ親子とか、風が微妙に強い中頑張ってバドミントンする親子とか、友達集まって鬼ごっこしてる様子とか、すごく微笑ましい光景が広がっている。


ふう、と息をついて芝生に寝転がり空を仰ぐ。隣で一生懸命絵を描く美佐を視界に端っこに映して。


「どう?絵の調子は」

「結構いいよ。一時期のスランプ時に比べたら、だけどね。なんか今無性に走りたい」

「どうぞ」

「嫌だよ、疲れる」

「はあ?じゃあ何で言ったの」


まだお互い中学3年生だってのに、なんだこのぐーたら感。日頃から運動してないと体育でも影響出るよね……この前も捻挫したばっかりだし。やっぱりストレッチとかお風呂上りにでもやろうかな。

寝転がったまま、足首をクルクルと回す。


「よし志眞、走って来い」

「何をさせるつもり!治ってはいるけど、急に走ったら絶対やばい!」

「うん、知ってる」


「……。」


この子最近私の扱いひどい……。なんなのよ、と思いながら身体を起こして周辺を見回す。何か絵になるような対象ないかなぁ。どうせ公園に来たって、私が写真を撮る対象は人間ではないのだから正直なところ被写体がない。

空は……だから、見事なまでの青空なんだよ。


「んー、ちょっと被写体探しの冒険行ってくる」

「いってらっしゃい」

「2時間後くらいに戻ってくるね」

「おー」


この子、ちゃんと聞いてる?
まあいいか、どうせ集中してるだろうから2時間経ったくらいでどこか行かないだろうし。

それにしても、親子が異様に多い。
祝日だからなのかもしれないけど、それにしたって多すぎだよ!?見てて面白いとは思うけれど、写真の対象にはならないんだよ!


目に映るものを適当に撮りつつ移動していれば、パコーン、パコーンと聞き慣れた音が耳に届いた。
なぜ聞き慣れているかって、放課後にファンクラブの声援に負けじと響いている音だから中庭にいたってよく耳にするのだ。


ふうん、テニスか。
それにこの音、親子ではなさそうだ。

ここで少し思考を巡らす。人間はたしかに私の中で被写体にはあまりしない部類だけれど、それはカメラに向かって作った笑顔浮かべるから嫌なだけであって、自然な動きを撮れるなら全然構わないのだ。少し練習してみようかなあ。


プロ目指すなら人間だって上手に撮れるようにならなきゃ!




「うそでしょおおお」


そう思って来たのに!なんかコートの中見知ってる顔ばっかりなんですけど!

まさかのテニス部の連中ですか。ああそうですか、上がりに上がってたテンションが一気に落ちたよ。崖から転落してるってくらいの猛スピードだよ。

……まあでも、一応。
ほら、要はバレなきゃいいんだよ、バレなきゃ。


木に隠れるようにしながらカメラを構え、シャッターを切る。べっ別にイケメンハンターとかじゃないんだからね!?ただ自然な動きを撮りたいだけだ。顔なんて知らない。

何枚か撮って、ディスプレイで確認する。ま、まあ多少顔は映りますが……にしても、なんでこんなに絵になるんだろう。イケメンだからなの?これきっと、周りの風景主役にさせようと撮っても、絶対に脇役にさせられちゃうんだろうな。それこそ、この前のエロ担当みたいに。


「けど、祝日にも活動って……」


熱心だなあ、ボソッとそんな言葉を呟きながら、再びカメラを構えてシャッターを切ろうと指に力を入れた時だ。


「ねえ、隠し撮り?」

「え」

「もちろんお金、払うよね?
だって、無断で俺達のこと、撮ってるんだから」




ぎゃあああああああああっ!!!


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