平凡 | ナノ

報われない人 [23/34]


最近の学校での生活を考えてみた。真面目に。

例年通り、変わらずひっそりと生きているはずだ。なのにどうしてだか、テニス部の人達と意図せず関わってしまっている気がするのだ。


これは嫌な予感。
鈍感な私だが、嫌な予感がひしひしと。

はあ、とため息をついたと同時、目の前にいた裕斗が盛大な舌打ちをした。


「てか、切原赤也むかつく!」

「急にどうしたの」

「だって抱き着いたんだろ!?お、俺だってまだ志眞に抱き着けてすらいないってのに」

「いや抱き着くな」


ガバァと両手を広げて近づいてきた裕斗の額にチョップをかます。それが意外にも痛かったのか、額に手を当てながらその場にするするとしゃがみ込んでしまった。ごめん、やりすぎちゃったかな。


「……苦労担当は去年からだし、ワカメ担当・エロ担当・美人担当と会話をしてしまいました」

「エロ!?誰だよそれ!」

「仁王」

「あの詐欺師と会話だと!くそ、あいつにだけはおまえの存在知られたくねえ!」

「大丈夫だって、あんな会話で面識持たれないよ。それに、私だって願い下げよ、あんなチャラ男」


一体何人の女子と付き合ってるの。
私が目撃した仁王が振る現場に、美佐が目撃した仁王が振られる現場……たった1ヶ月の間で何が起きているのさ、怒涛だな。

しかもあの時、女子は「好きって言ってくれたのに!」って発言をしていた。ということは、付き合ってはいたということだよね。


「絶対あれのファンクラブの人達過激そうだよね。温和にいこうよって感じ」

「柳辺りは温和そうだな」

「あの人はジャッカルの次くらいに優しい!と思ってる」

「まあ、あの中じゃあそれくらいだろうな」

「なんで優しい人に限ってファンクラブの人数少ないんだろう。ジャッカルとか、とくに」

「ジャッカルな、……とくにな」


じーっと見る。ジャッカルを。


「そっそんな目で見るんじゃねえええ!」


どうせファンなんて少ねえよ!
そう言いながらジャッカルはダッと教室から出て行った。きっと、トイレだね。一瞬見えたキラッとした雫は、見なかったことにする。


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