平凡 | ナノ

ある人の穴場 [20/34]


シャーペンを走らせる音と、本のページを捲る音が融合した場所、図書室。

そんな場所で、気になる本を探すため本棚の上から順に目を移動させる。ここの図書室は有名な写真家さんが出版した本とか多数置いてあるから、すごく嬉しい。



「あ、これこれ」


スッと取り出し、ペラペラと軽く中身を見る。

うん、やっぱり上手。
どうしたらこんな魅力的な写真が撮れるんだろうか……もっと研究しなきゃなあと読みながらどこか空いた席に座ろうと歩き出したら、ぶつかった。



「!」

「、歩きながら読むのは感心しないな」


ひぃいい!
テニス部レギュラー美人担当 柳蓮二!


そ、その目は見えているのですか……!?
とは言えないので黙っておくが、うん、近くで見たらなおさら美人だなあ。


「ごめんなさい」

「いや、こちらも注意すべきだったな」


……柳くんは、ジャッカルの次くらいに良い人っぽい感じがする。

ぺこりと軽く頭を下げてから、空いている席に座って写真を見ることに没頭した。



「ねえ見た?」

「うん、見た見た!」


こそこそと聞こえる声が、耳に届いた。
チラッと視線を上げれば、ある場所を見ながら嬉しそうに頬を赤らめる女子が二人いた。


「まさか柳くんに会えるなんてね」

「クラス違うとあまり会えないけど、久しぶりに近くで見られた気がする」

「図書室、穴場かもね」


そうだよねえ。柳くん、テニス部なんだよね。
人気くらいあって当然なんだろうけど、そんな人と、私さっき少しだけ会話しちゃったよ。おおお、どんな展開。

今までまったくと言っていいほどテニス部の人たち(ジャッカル除く)と話したことなかったのに、最近おかしいなあ。



まあ、たった一言二言の会話で面識持たれるわけないと思うけど。


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