平凡 | ナノ

さすがテニス部 [18/34]


『では、校長先生からのお話です』

放送委員のこの声が、マイクを通して体育館に響く。
今日は月に一度の全校集会。立海生が体育館の中に集結しているのだから、すごい。一度でいいから舞台の上からこの光景を見てみたい。

ふわあ、と出た欠伸。
誰も見ていないだろうけれど、やっぱり女子だし、ここは口元を手で押さえながら。


校長先生の話は非常につまらない。
周りでも、欠伸をし出す者もいるし、足が疲れたのか片足ずつぶらぶらさせている者もいる……体育館全体が、ダルそうな空気。


『では、話を終わる』



わーい!早く教室戻ろう。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、なぜか校長先生は舞台の上に残ったまま。いつもならすぐに降りて行くのに。はて、何事だ。そうこうしているうちに、舞台袖から出てくる先生の手には表彰状と、トロフィー。

あああ、これはあれだ。




『春休み中、我が校男子テニス部が見事優勝を収めた。では、男子テニス部、前へ』


そう言うと、男子テニス部レギュラーが静かに舞台へと上がって行く。
見事に体育館はざわめいた。
さっきまで眠たいオーラ放っていた女生徒なんか、急に目をカッと開いて凝視してるんだけど!


「キャアアア幸村様ぁああ!!」
「さすがテニス部!」
「丸井くんピースしてええ!」
「素敵ーっ!」


なんだよこの変わり様。
まるでアイドルのコンサートを見に来たかのような感じなんだけど。行ったことないけど、例えるならソレなのだ。で、私はこの活気について行けずひとり浮いてる人ね。

にしても、これがあるからジャッカルこっちに並んでなかったんだ。


『おめでとう』


表彰状を部長が貰い、トロフィーを隣にいた副部長が貰った。

パチパチとキャアアとが同時に響く。
私は、ああ良かったねと乾いた笑みを零しながら小さく拍手を送った。




To:青りんご
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ねえねえ青りんご。
たとえば、
苦手な人達が栄光を手にしたら
素直に喜んであげるべき?
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