平凡 | ナノ

メル友 [17/34]


To:青りんご
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お誕生日おめでとっ!
青りんご15歳じゃん
四捨五入したら二十歳だよ!?

一ヶ月ちょい消息絶ってごめん!
いつものことだと思って、青りんごの海のように広い心で
こんな私を許してね?
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ピッ。送信っと。

4月ももう後半に突入。
そんな今日、メル友である“青りんご”がめでたく誕生日を迎えたのだ。


「誰にメール?まさか男ー?」

「男と言えば男だけど、名前も顔も声も知らない人」

「うわ、危な!」

「大丈夫だって。めっちゃいい人だし」


そう、青りんごは私が何ヶ月もメールを放置してしまったことに怒らないの。優しいでしょう?

こんな自由奔放な私を受け止めてくれる唯一の存在だと思うんだよ、彼は。前にそのことをメールで伝えたら、「マジでか(笑)」て返信来た。まあでも、結局友達止まりだろうなぁ。


「どうやって知り合うのそんなの」

「あぁ、小学生の時に中学受験で某通信教育やっててね、ネットとか繋げると掲示板があって、それで意気投合ってか……向こうからメールしましょーって来た」

「小学生から!?」

「だから今年で4年目突入」


そう言ってピースすれば、美佐は目を大きく見開いてよく続くねと言った。そりゃまあ、


「青りんごが心広いから」


「……なに、青りんごって」

「ハンドルネームだよ」

「お互いなんも知らないで4年もよくメールできるねぇ、知りたいと思わないの?」

「とくに」


まあ、これでも一時期はちょっと知りたいかもって思ったこともある。でもイメージ崩したくないって気持ちの方が大きかったのだ。

絶対優しい人だよ青りんご。
何も知らないわけじゃないんだから!

部活は全国区らしいし、家ではケーキなんかも作っちゃうし弟の世話もしてるんだって!なんて素敵なお兄ちゃんなの!




「私の誕生日の時なんか、わざわざケーキ作ってくれて写メで送ってくれた」

「それってどうなの」

「食べられたらもっといいけどさ、作ってくれただけで嬉しかったし。今年も頼むんだー」

「その青りんごのこと、好きなの?」

「いや」

「ほんとかなぁ?」


ちょ、なにニヤニヤしてるの!?

だから違うって。青りんごはいい人だけど、恋愛対象にはならないよ。友達だもん。



ブーッ、ブーッ

「お、返って来た?」

「うん。部活終わったのかもね」



From:青りんご
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誕生日だけは覚えてんのなおまえ。
まっサンキュー!
二十歳とか言うなっての……
じゃあ黒猫は10歳のガキってことだな

ほんとだよ。毎度毎度さあ。
メール切ったら罰ゲーム
って前に言ったけど覚えてっか?
そんなにやりたい?
1週間続いたら許してやるぜ。
俺、心は海のように広いからさ!
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「ふは。罰ゲームってどんなだし、送信」

「短っ。てか、あんた黒猫って」

「黒猫が好きだからそのままそうしただけだよ」

「それはわかるけど」


「あ、来た」

「なんだって?」









「ちょっと、聞いてる?なんだって?」



To:青りんご
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ひっ!
おぉおおお、それだけは勘弁!
1週間、いや1ヶ月以上
青りんごとメール続けます頑張る
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ピッ

「はあああ、恐ろしい奴め」

「だからなんだよ」

「ああ、これ」



From:青りんご
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土下座の写メ。
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土下座なんてね、別にそれくらいはいくらでもしてやりますよ。プライドなんて投げ捨ててあげますよ!

でもそれ、写メでしょ?
必然的に色々わかっちゃうじゃないか。


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