平凡 | ナノ

さあ、大声で! [16/34]


そうそう、私早くスーパーに行きたいんだよ。お母さんに、「帰りに卵と椎茸買って来て」て言われてるから、使命を全うしなくちゃいけないんですよ、ねえねえ。


「美佐さん」

「んー?」

「どこ行くんだ」


「テニスコートだけど」



はぁあああ!?
ちょ、なに言ってるのかなこの子!

え、今まで一緒に打倒テニス部!って言ってたくらい美佐も好きじゃないのに!?


「どういう風の吹き回し」

「勘違いしないでよ?別にキャアキャア言いに行くんじゃなくってジャッカルに用事が」

「ジャッカル?」

「うん。ほんとは放課後入る前に済ましたかったんだけど、あれよあれよと時間過ぎて」

「なるほど、それで今ね……てか私」


「一緒に来てくれるのが友達でしょ」




う、うおぉおおお、逆らえなかった。

仕方ないからついて行く。
体育以外でテニスコートに近づくのは初めてで、周りに群がる女子を生で見て引いた。



「丸井くぅううん!」
「きゃああああ目が合ったわああ!」
「柳くん美人!」
「幸村様だって美人よ!」


なに美人対決してるのさ。

テニス部美人担当は柳くんで正解だよ!
幸村くんは、噂で聞いてると色々すごいから美人担当からは外して違う担当だもん。私の中で。


「てか無理じゃない?」

「ここまでとは思わなかった」

「こんなんじゃジャッカルの名前叫んだって聞こえないよ」


てことで私は帰る、と踵を返したのに美佐ったら全力で止めてくるから帰ることはできなかった。



「大丈夫。志眞の声、特徴的だから」


グッと親指を立てながら言う。

え、えええ?私に叫べと!?
なんでこうなるの。私が用事あるわけじゃないのに、どうして私がジャッカルのこと呼ばなくちゃいけないの。









ジャッカァアアアル!!


相当恥ずかしい。何この羞恥プレイ。

呼び終えてからしばらく羞恥で顔を覆った。ありがとうねと肩をポンポン叩く美佐の声がすっごく優しくて涙が出そうだけど、あんたが原因なんだからね、わかってる!?



「おまえかよ、驚かせやがって」


そして、呼ばれた人物は来た。

後ろに少年を引き連れて……なぜいる!


「久しぶりっす、志眞先輩!」

「えええ、名前教えてないよね」

「ジャッカル先輩に聞いたんで」

「聞いたの言葉の裏に、問い質したって聞こえる気がするけど幻聴?」

「お、鋭い。」


ジャッカルのバカ!簡単に人の名前をポロっと教えるもんじゃないよ、こっちは避けたくて避けたくて仕方がないってのに!!



「ジャッカル、英語のノート貸して」

「は?」

「あんた予習してるでしょ?あたし英語苦手だから、ジャッカルの写そうと思って」


美佐……そんな理由で!

この後3日間くらいは、彼女からのお願いはとことん拒否しました。


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