平凡 | ナノ

生徒も先生も [15/34]


ピーッ

「お疲れ様、志眞」

「ういー」


次のチーム、コートに入って!と言う先生の声を聞きながら、壁に身体を預けていた美佐の隣に行き腰を下ろす。

美佐は今日は見学だ。具合悪いそうだ。
バカでも具合悪くなるんだって冗談で言ったのに、思いっ切り頭殴られた。地味に痛かったんだから。



バレーボールの試合が始まった。

コートで試合する女子はこれにしか集中できないけど、休憩中の女子は校庭ばかり見て黄色い声援を送っている。原因は、テニス部がいるからだと思う。


クラス数が多いから、合同で体育の授業は行われるんだけど……今年はどことだっけ?




「あなた達!ちゃんとこっちに集中―」


先生の怒鳴り声すら聞こえちゃいない。

先生は注意することを諦めたのか、はあ、とため息をつき、試合の方だけを見るようになった。でも実はさ、先生も校庭の方見たかったりするんでしょ?



テニス部は、生徒だけじゃなく、どうやら先生まで虜にしてしまうくらいイケメンらしいから。


まあ、実際そうなんだけど。
だからエロ担当は保健室でも普通にサボれちゃうんだよねこれが。先生に色目使ってんだろうどうせ。あの先生イケメンに弱いし……そのくせ普通の人にはちょっと厳しい。贔屓だ、贔屓!



「よっ、志眞」

「……え、何しに来たの裕斗」

「ちょっとは喜べよー」


ぶぅ、と頬を膨らませながら体育館を覗く。
先生!ここに覗き魔がいるんですけど!いや、ほんとに何しに来たんですか!?


「校庭から見ると面白いんだぜ?」

「何が?」

「開いてる扉から見えるのは女子の顔のみ」


「「ぶふっ」」


美佐と二人して噴き出す。
でもそうだよね、あんなにギュウギュウ押し合いながら見てれば、校庭からは顔だけしか見えないのかもしれない。

あはははは、と笑っている中、急に静かになった裕斗に気づいて、私はチラと上を見上げた。



「…………」



今のその顔、すごくいい。
私達を見ていなくて、校庭の方を見ているのか真剣な表情で遠くを見つめる裕斗。

カメラが手元にあれば!!
なんて惜しい絵を逃すんだろう私、と後悔しながら校庭を見てみたくて這い這いして顔を覗かせた。



「ん、どした?」

「いや、何見てるのかなーって」

「試合。テニス部の奴、テニス専門のくせにサッカーも上手くてさ」

「ふーん」


スポーツの良し悪しはわからないけど、サッカー歴長い裕斗から見てその評価ってことは、テニス部の人達上手いんだろう。

試合風景をぼーっと見ていれば、ジャッカルがいた。


しおりを挟む