主役の座は銀色 [14/34]
ファインダーを通して見えた銀色は、そこから退く気配を見せずに私を見下ろしていた。しばらくそのままでいたけど、なんか気まずくなって目を離してカメラを置き、身体を起こした。
「こ、こんにちは……?」
「おう。」
「今、授業中じゃ」
「あー、サボりじゃき」
サボり。ここに隠すことなくサボりを堂々とする人がいましたよぉおおお!
エロ担当は教室どこだよ。
まったく、屋上に行ったらいましたと言って連れてってやろうか……いや、それじゃあもれなく私までサボり扱いされるよ!
「おまえさんこそ何してんじゃ」
「写真です。写真を撮るという名の自習」
「……俺のこと、誰かわかっちょるよな?」
「?まあ、わからないこともないですが」
テニス部レギュラーのエロ担当 仁王雅治
なぜそんなことを聞くのだ?
……あ、いや今わかった。私の反応がとーっても薄いからだろうな。ごめんミーハーじゃなくって。
「それよりもどうしてくれるんですか」
「何が」
「何が、じゃなくって。せっかく綺麗な雲を見つけたのに、あなたが入り込むから台無し」
さっき撮った写真を見る。
これじゃあエロ担当が主役だよ。
主役は綺麗な形した雲のはずだったのに、エロが前面に出てるから一瞬にして脇役だよまったく!
「じゃあ私教室戻るんで」
立ち上がって屋上の扉へ向かう。
少し重たい扉を開け、校舎内へと入り階段を一歩、また一歩と下り始めてから段々と心拍数が上がってきた。
……台無し、ねぇ。
自分でそんなことを言っておいてあれだけど、もう一度写真を見る。
「絵になり過ぎ」
作られた笑顔じゃない。むしろ無表情。
なのにそれはすごく自然体だから。
背景の青空と少しの雲に、マッチしていて、やけに私の心を捕らえる一枚となっていた。
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