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ちっぽけな人間、 [13/34]


4時限目の授業が自習になった。

先生、急用ができたらしい。
その報告をしに、学年担当の一番恐ろしい先生が来た時には教室中静まったよ。ほんとに、びっくりするくらい。


パシャ、パシャ

「青空よりも雲がある方が絵になるね」


屋上で仰向けになりながら、空の写真。

別にサボりじゃないよ!
これは、私なりの自習なんだからいいの!


一度シャッターを切るのをやめ、カメラを置く。




「やっぱ人間ってちっちゃーい」



手を伸ばしながらそんな言葉を呟いた。

こうしてのんびりしている間にも、
誰かさんは忙しなく仕事をしているんだろう。
誰かさんは子供を産んでいるんだろう。
日本の裏の誰かさんは寝ているんだろう。


たくさんいる人間を、この空は一度に見ているんだよ。そう思うと、すごいよね。



「もっと、いっぱい知りたいな」



生きていることの不思議。
一枚の写真に収めることで何かがわかるんじゃないかって思って、カメラを手に取った。

なのに人間をあまり撮らないという矛盾。


別に撮りたくないわけじゃないんだけどね。

カメラを向けると、作るんだもん。
笑顔作って、ありきたりなポーズして……そんなの全然自然体じゃないから。



「あっ、あの雲綺麗」


咄嗟にカメラを取る。

ピントを合わせ、いざシャッターを切ろうと指に力を入れ、パシャ、と音がしたのと同時。



「何してんじゃ?」


青空と綺麗な形の雲

それを背景に写り込んだのは、銀色だった。


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