平凡 | ナノ

理想は年上彼氏 [11/34]


「やっぱり付き合うなら、兄貴っぽくて包み込んでくれるような優しさ持ってて、でもどこかお茶目っぽい行動もできる人がいいな」

「そんな人いるかねぇ?」

「いないかなぁ。うー、頭ポンポンしてもらいたい!めっちゃキュンってする」

「あたしはとにかく大人な人ね」

「年上いいよね、ほんと!」


美佐と教室でお昼を食べながら理想の彼氏像を語る。彼氏は大人な人がいいってのはお互いそうらしく、そこにあれこれプラスするのが私。


彼氏いない歴=年齢

な、私達にとっては、付き合うってことに関しては少しだけ夢見る乙女なわけで。




「そういえば去年卒業した荒木先輩、かっこよかったよね」

「あっわかる!なんかもう、大人です。な雰囲気すごいあったよね、人気あったし」

「しかも一途。素敵過ぎる」

「今もう年上いないもんね。私達が高校に上がったらまた年上だらけだけど」


この学校には対象いないかもね、と二人して笑う。



「あ、ねえねえ、じゃあアレは?」

「んー?」







「ジャッカル」

「真田!……突然、どうした?」

「部のことで話がな。今平気か?」

「おう」


ジャッカルを訪れたのは、


テニス部レギュラー3年

老け顔担当“真田弦一郎”だった。



真剣な表情で部活のことジャッカルに話している最中悪いが、やばい、どうしよう!

ぴくぴくと肩が震える。
美佐が変なこと言うから!と思い彼女に目配せすれば、すでに限界が近いのか、口元を手で押さえていた。



「おまえら二人には―」


「ぶっ、ははははははは!!」

「ちょっ志眞!笑い方ひどっ、う、あははは」


ダメだった。堪え切れなかった。

いきなり教室に響いた私達の笑い声に、何か言いかけていた真田がこちらを見た。怖っ!



真田のことで笑ったんじゃないってことをわからせてあげなければ、まずい!え、えぇえっと……、


「あっ、あれはやばいよねー!」

「ふっはは」

「年上とか、そういう問題じゃっ」

「でも大人な人ってのは、クリアっかも」


「案外お茶目だったらどうしよー!」

「ちょっ、想像したら笑いが、お腹痛い!」


正直話の内容は変わらなかった。ただ、年上という単語で彼の意識は私達から外れた、と思う。そしてあまりにバカ笑いしているのが気になったのか、何の話をしているのだと裕斗が近づいて来て。



「えっ、と、最近人気出てきたお笑い芸人」



という苦し紛れの嘘はすぐにバレて。
放課後に本当のことを言えば、同じく彼も大爆笑した。



大人な人でも、それが同い年で、且つ老け顔ならば、それは恋愛対象になるならないの問題に達する前に、とりあえず笑いの対象になるということがわかった。


しおりを挟む