夜中。なんだか目が冴えて眠れなくなった。
雲雀くんに用意してもらった毛布から出て、鈴の音を鳴らさないように静かに移動して雲雀くんが眠る布団に近づいた。
「……」
綺麗に寝るなぁ、雲雀くん。私なんか、この時間だと毛布蹴ったりしちゃう時間だ。
ねぇ雲雀くん、その優しさは、動物にだけ?
私が人間に戻ったら、昨日みたいに優しくはしてくれないんだろうし、微笑んでだってくれないし、名前だって呼んでもらえないよね。
いつ、人間に戻っちゃうのかな。
猫になったのも突然だったから、戻るのも突然なのかな。……どうしよう、目の前で戻っちゃったら。
トクン、トクンと小さな心臓が動く。雲雀くんが私に触れてくれたように、私も雲雀くんに触れたいよ。
知ってた?
私ね、雲雀くんのことが、好きなの。
猫になってからじゃないよ。学校ですれ違う度、咬み殺されるんじゃないかって友達とびくびくしながらも、ドキドキで胸が苦しかった。彼にとって、私なんかは並中生徒のひとりっていう認識しかなさそうだけど。
だから、猫になって拾われて、撫でてくれてすごい幸せだと思った。嬉しかった。
「 」
言葉にならない。いや、できないのに、私は寝ている雲雀くんに告白をした。
「ん、」
「……!」
小さく発された彼の声に驚いて、首輪の鈴がリン、と静かな部屋に響き渡った。
「……ナマエ、」
「にゃ」
「眠れない?」
薄っすらと目を開けている雲雀くんの顔を見れず、視線を畳に落とした。起こしてごめんね……私なんかに好かれても、迷惑なだけだよね。
猫なのに、頬に涙が伝った気がした。
「ナマエ、おいで」
「っ?」
スッと布団の中から伸びて来た手は、私の頬をひと撫でして。
ふと視線を上げれば、布団を少しだけ持ち上げている雲雀くん……え、中に、入れと!?むっ無理だよ!そんな、一緒に、寝るなんて……!
私の気持ちなんて知らず、雲雀くんはピクリとも動かない私に痺れを切らしたのか、腕を掴んで少々強引に布団の中に導いた。
もっと、寝れなくなっちゃった。
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