「おいで」
その呼びかけにピクンと耳が反応して。クルリと顔を後ろに向ければ、縁側にはラフな格好をした雲雀くんがいた。初・私服姿!
それはいつもの近づき難い雰囲気から一変、なんだかすごく優しそうな雰囲気の雲雀くんに、思わず胸が高鳴ってしまった。
座り込んでいたお尻を上げ、なんだろうと思いながら彼の傍に駆け寄る。
縁側に上がれるかなと不安だったけど、猫のジャンプ力はすごい。こんなにもあっさり上れちゃうなんて!
「大人しくしててよ」
縁側に腰を下ろした雲雀くんは、私の身体をひょいっと持ち上げると、自身の膝の上に私を座らせた……え、これ、うわああ!
思わず興奮。だって私、今雲雀くんの膝の上に座っちゃってるんだよ!?これで冷静を保てるわけがないじゃないですか!
ドッドッドッと鳴り響く心臓に気が狂いそうだと、ギュッと目を瞑れば、首に何かを付けられたような感覚。
チリン、
「……っ」
「野良にしておくのは勿体ないし、僕の家で飼ってあげる。その首輪古いけど、付けておけば飼い猫だって一目でわかるからね」
鈴の音が鳴る。
お古の首輪……ということは、前にも猫を飼っていたのかな。けどな、恥ずかしいな。雲雀くんからしてみれば、猫に付けたってだけの話なんだろうけど、私は心は人間のままですから、これはなんか特殊なプレイとしか思えないのです。
「名前はどうしようか」
「にゃ?」
「飼うんだから、名前ないとダメでしょ」
名前ですか。ありますけどね、本名は。
でもまぁここは雲雀くんのネーミングセンスにお任せしてみよう。ヒバードって名前をつけるあたり、ちょっと怖いけど。
「決めた。」
その言葉に鈴の音を鳴らして振り向けば、私の頭にぽふんと手を乗っけて微笑んだ。
「──ナマエ」
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