目が覚めたら、いつもと同じようで違う世界が広がっていた。色がおかしいのだ。認知できないわけではないが、あまり鮮明ではないし、まず布団が重すぎる件について。
はて、自分の身に何が起きているんだ、と頭を動かして周囲を見てみると、視界になんだか猫のひげのような白いものが入り込んだ。
「……にゃ」
……あれ、日本語が出ない。これ猫語?
あっはっは、猫が好きだからってここまで来たら末期じゃないか気持ち悪い!よいしょ、と身体を起こそうと腕に力を入れるが上手く座れない。なんでだろう。仕方ない、うつ伏せになってから起き上がるか。と、クルリと体勢を変えれば次に視界に入り込んだのは。
ねっ猫の手ええええっ!?
うわあ、超もふもふしてそう可愛い!……じゃなくって。うちには猫なんていないはずだ。飼い始めた記憶も、野良猫を連れて来たような記憶も、一切ないわけで。
嘘でしょ嘘でしょ、と脳内でその言葉が巡る中、ベッドから飛び降り(この時点で脳がクラリとするわけだが)等身大の鏡の前へと移動する。
「にゃんにゃんにゃあああっ!」
自室に私の悲鳴(猫の鳴き声)が響いた。
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