ヒバリ、ヒバリ!!
彼の肩にちょこんと乗っかる黄色い鳥はいつものように彼の名を呼ぶ。別に用があって呼ぶわけではないから、彼も聞き流していることだろう。
だから、というわけではないけど、試しにしていることがある。放課後、彼が学校の見回りに行くのを見送ってからしていること。
「それじゃあ、行ってくる」
ピシャリ
応接室から出た彼の距離が、この部屋から遠くなったのを確認して、黄色い鳥(通称ヒバード)と向き合う。
「ヒバリ、ヒバリ」
「雲雀は見回り」
「ヒバリ、見回り」
「うん」
キョロキョロと忙しなく動くヒバードをこちらに集中させるため、人差し指をピッと目の前に出す。そうすれば、驚いたのか私の人差し指をジッと凝視。あはは、本当、可愛らしい動物だよあなた。
「雲雀、好き」
「ヒバリ、スキ」
「うん、好き」
「ヒバリ、スキ!ヒバリ、スキ!」
言葉を繰り返すのは、まるで九官鳥のようで。
それを利用しようとしているのだけれど。私は臆病者だから、雲雀に直接その言葉を伝えることはきっと一生できない。だから、ヒバードのこの特性を利用して伝えてしまえと思った。発する言葉を聞き流すから「好き」を教えたところでさして問題ないだろうし、いいのだ、自己満足だもの。
(しかし未だこの言葉を発してくれたことはない)
数分だけこのやり取りをして、私は残りの作業に取り掛かった。
ガラ、
「あ、」
「サボりでもしてた?作業、進んでないじゃない」
「休憩はしてた」
「それを―」
サボりと言うんでしょ。という小言が飛ぶはずだったのだと思う。
それを邪魔したのはバサバサと音を立てて飛んだヒバードで、いつものように彼の肩にちょこんと止まった。そしていつものように……。
「ヒバリ、ヒバリ!」
「うるさいよ」
「ヒバリ、スキ!」
「……っ!?」
「は?」
思わず手に握っていたシャーペンを折ってしまいそうになった。
どうせヒバードの言う言葉だしと思って、ちょっと軽い気持ちで教えていた部分はあったけれど、いざそれを口にされると……。
というかどうしてこのタイミングなのか。
本当は、彼が仕事に集中している時にさり気なく発してほしかったのに。そうすれば、今みたいに、その言葉に引っかかることなんかなかったのに。
「ちょっと、何言って」
「ヒバリ、スキ!スキ!」
「……ねえ」
「っ!ヒ、ヒバードそんな言葉も知っているんですね」
「スキ?」
「そ、そう、スキ……。よ、よっぽど雲雀のこと気に入って」
ヒバードの言葉を繰り返しただけで、特に意味などない雲雀からの「スキ」の言葉に動揺が隠せなかった。
私に視線を向けたかと思えば、ゆっくりとこちらへ歩み寄って来る雲雀。
「好き、ね」
「っ……な、なに」
「面白い言葉を覚えたね、ヒバード」
見下すような視線を向けられたかと思えば、肩に乗るヒバードの喉元を擽るように撫でながら、雲雀は口角をほんの少し上げて妖しい笑みを浮かべて私を見た。
ああ、タイミングってやっぱり大事だ。
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執筆した本人も謎展開である。
というか話の運び方下手くそすぎて笑えます。