「…メリークリスマス、シズちゃん」 「あぁ、メリークリスマス」 「……で、何なのかなぁこの手は」 12月25日、世間一般的にクリスマスと呼ばれるその日。 二人で小さなパーティーを開こうと前々から準備を進めていた俺が、鼻歌を歌いながらツリーの飾り付けを終えたのが調度1時間前。 それから…シズちゃんが家に来て、玄関に入ると同時に当たり前のように抱きしめて来たのが10分前で…そして、俺の腰の辺りに嫌らしく這わされたシズちゃんの手を叩いたのがたった今の出来事だ。 「何しやがるんだ」 「それはこっちのセリフだよ!何ナチュラルにセクハラしてるわけ!?」 痛みは感じていないらしいが、叩かれた事が不満であるらしくシズちゃんはむっと眉を寄せながら口を開いた。それに当たり前のように反論を返しながら俺はその腕から逃れようと身をよじる。 するとシズちゃんもまた当たり前のように俺を抱きしめる腕の力を強めてくるもんだから、抜け出せずにさらに身体を密着させる羽目になってしまった…ってか、力強すぎ、ちょっ…痛い、痛い! 「もう、なんなわけ!?俺クリスマスの準備…っ!」 必死で抵抗を見せ腕を突っ張り胸板を押し返しながら怒鳴る俺の口は、虚しくもこの金髪の持つ大きな口によって塞がれてしまった。それでも尚抵抗する俺になどお構いなしで、シズちゃんは舌を俺の咥内に侵入させ、好き勝手に舌を絡めたり吸い上げたりを繰り返して来た。 「ん、ふ…ぁ」 深くて荒々しいその口付けに悔しくも全身の力が抜けてしまうのを感じながら、俺は必死で縋り付くようにバーテン服を握りしめ、ようやく口付けから解放されたと思ったときには相手の身体にもたれるようにして立っているのがやっとだった。 「…パーティーの準備は後回しにしろ、どうせ二人だけでやるもんだしよ」 もたれ掛かりながら荒い息を繰り返す俺が返事を返せる状態じゃないの「…つーわけで、まずは手前を喰わせろ」 なにが、"つーわけで"だ。話繋がってないじゃないか。 そんな反論を返してやりたかった。 やりたかったはずなのに… 「………!」 俺の方から口付けてやればシズちゃんは驚いたように目を見開いた。 ああもう、文句を言い返してやるはずだったのに… クリスマス、そう全部クリスマスが悪いんだ。この浮かれた雰囲気が悪い。この雰囲気のせいで…たかがキスごときでこんなに相手を感じて…欲してしまっているのだ。 「……するならさっさとしてよね」 目を反らしながらぶっきらぼうに言い放ってやれば、ふと目元を緩めるシズちゃんに不本意ながらも胸が高鳴るのを感じる。 「…メリークリスマス、臨也」 「……それさっきも聞いたよ馬鹿」 だけど、こんなクリスマスも俺達らしくて悪くない。 そう思ったのは相手には絶対言ってやらないけど。 もう一度こちらからキスをしてやりながら、俺はなんだかんだで幸せなこの時間が嬉しくて相手に気付かれないようにこっそりと笑みを浮かべた。 Merry merryChristmas (性なる夜ってうまい事言った奴本当に頭いいな) |