寒いのは苦手だが冬はいいものだ。 顎をテーブル部分へと乗せ、背を丸めながらぬくぬくとしたこたつの温かさを味わう。 はぁ、と小さく息を吐きながら津軽は目を細めた。 確かに寒いのは好きではないが、こうやって温かさを感じられるのもまた冬の特権だ。 そんなことを考えつつ、津軽は気持ちの良い温もりに再度息をついた。 そしてその心地よさはまどろみへと変わり、うとうとと瞼を下ろしかけたその直後。 「ばぁ!」 突然現れた顔に仰天し、津軽はびくりと身体を跳ねさせた。 まどろんでいる所にいきなり顔が現れれば驚くのは当然であった。勿論それが恋人の顔であったにしても。 「…サイケ」 「えへ、びっくりした?」 バクバクとうるさい音を立てる心臓を落ち着かせるかのように胸に手をやりながら、津軽は顔の主の名前を呼んだ。 悪戯が成功したことが嬉しいのか、サイケはにへらと気の抜けた笑顔を浮かべてこたつからのそのそとはい出てきた。 そんなサイケの様子を見て、無表情ながらにちょっとした仕返しを思いつき、津軽は自らの膝をぽんぽんと叩いた。 「…座っていいの?」 嬉しそうに聞いてきたサイケに頷き、胡座をかいた膝の上にサイケを乗せる。 相変わらず軽い。 津軽は腕の中の恋人を抱きしめつつそんなことを考えた。 ふいに相手に回していた手を脇腹の方へと移動させ、津軽はそのままくにくにと指を動かした。 「え…!?ふぁ、きゃは…!や、ははっ…くすぐったい…!」 完全に気を抜いていたサイケは、きっちり抱きしめるような体制である津軽の腕の中で驚いたように声をあげる。 そんな体制では逃げることも叶わず、必死で身をよじりながら笑い声を漏らした。 耳に届くかわいらしい笑い声や身体全体に伝わる相手の温もりを感じ、津軽は口元を緩めた。 あぁ、やっぱり冬はいいものだ。 (ひ、はは!も、津軽っ…ふぁ、くすぐった…いよぉ!) |