「シズちゃんなんて、このあっついお粥食べて死ぬほど汗かいてそこに置いてある寝巻きに着替えてとっとと安静に寝ちゃえばいいんだよ!」 よくも噛まずにこんな長ったらしい言葉をスラスラ言えたもんだ。 呆れを通り越し、もはや感心している俺に向かって熱々のお粥を差し出しながら、臨也はプイと顔を背けた。 「別に、シズちゃんの風邪が早く治って欲しくて作ったとかそんなんじゃないから!」 …ここまでくると逆に萌えを感じないと言うかなんと言うか。 ただでさえ風邪ウイルスによって下げられていたテンションを更に急降下させつつ溜め息を吐き出す。 つーか、これはどう考えても… 「演技だろ臨也。病人にいちいちつっこみ入れさせんな」 「え―…何、もうバレちゃったわけ?折角このグダグダなまでのツンデレっぷりを楽しんでたのにさぁ」 言っている程がったかりした様子も見せずにけらけらと笑っている臨也に頭痛が増すのを感じながら再度呆れの吐息を口から吐き出す。 「…確かに、素直になれなくて照れてる奴って可愛いって話をトムさんとしたこともあったけどよ…これほどワザとらしい奴に可愛いって感じる男は中々居ないと思うぜ?」 きっと目の前の男は、数日前仕事の合間にトムさんと俺が話してたのを盗み聞きして今日このような意味不明の演技を行おうという考えに至ったのだろう。 …暇なのか?コイツは。 「ちぇ―、折角シズちゃん喜んでくれると思ったのになぁ」 口では不満を言いながらも何処と無く楽しそうな臨也の様子に眉を寄せながらも、取りあえずお粥を食べるかと手を伸ばしかけてふと気付く。 こいつ、楽しいというよりどっちかっていうと… 「手前、嬉しいのか?」 「…は!?」 いきなり俺から投げ掛けられた問い掛けに驚いたようにびくりと肩を震わせながらも、図星だったらしくあわあわと口を開閉し始めた。 やっぱりな。 「あれか?作ったキャラを否定されて、あぁ普段の俺のままでいいんだって考えて安心したりしてんのか?」 「ち、違っ…!」 ニヤリと口端を持ち上げながら言葉を紡いでやれば、口では否定しながらもみるみるうちに真っ赤になっていった。 無理にキャラ作らねぇでも十分ツンデレなんだよなこいつ。 さっきのより今の自然なツンデレっぷりが何倍も可愛い。 「シ、ズちゃんの馬鹿っ、あほ!」 「るせぇよ、んなことよりとっとと隣に来てふーふーしろよ」 「っ…出来るか!」 本格的に耳まで真っ赤になってしまった臨也の姿に満足しながら、しばらくはこの可愛らしい恋人をからかってやるかと俺は小さく笑みを溢した。 素直になれない! (シズちゃんなんか風邪で死んじゃえばいいんだ) |