「ねぇまだ?」 「遅くない?そろそろ焦げるんじゃない?」 「あーぁ、俺お腹空いたなぁ」 うぜぇうぜぇうぜぇ!!! 「少しは黙れねぇのか、手前はよ!」 俺が運び込んだばかりのテーブルに顎を乗せ、まるで子供のようにうだうだ言ってくるこいつに青筋を立てて怒鳴り付ける。 くそ、一瞬でもこいつに見とれてしまったのが悔しくてならない。 苛立ちながら俺はキッチンに立ち、簡単な食事を作っていた。俺のではなく、このうざったい奴の為に、だ。 「俺は折原臨也。見ての通り人間じゃない」俺が目を覚ました時、つい見とれてしまって動けずにいると、こいつは都合が良いとでも言うように笑顔で自己紹介を始めた。 寝起きで若干頭がついて行けずにいた俺は、ただただ呆気に取られてこいつの話を聞くことしか出来なかった。 臨也の話は、あまりにも非日常過ぎて全く理解が出来なかった。ただ、混乱した俺にも分かったのはこいつが人間でないということ。この土地に何百年も一人で住んでいたということ。 この二つだけだった。 一通り話を終えると、満足したのかこいつは一旦口を閉じた。 …何が何だかわからない。 ぐちゃぐちゃした頭を整理させようと口を開きかけた俺に、「とりあえず」と臨也は再び口を開いた。 「色々聞きたいこともあるだろうけど、まずはお腹空いてるから何か食べさせてよ」 そして現在に至るわけである。黙っていれば美しいこいつも、一度口を開けば文句と注文を重ね合わせ俺に押し付けてきた。 正直うっとおしくて仕方がない。 「おら、飯だ」 「お、待ってました」 引っ越したばかりで冷蔵庫は空。とりあえず友人からお祝いにと貰ったうどんを茹で、さっき近くのコンビニで購入してあった卵をトッピングしただけのそれを臨也の前に差し出す。 そんな物でも、余程腹が減っていたのか臨也は嬉しそうに箸を手に取ってうどんをすすり始めた。ってか、幽霊でも飯食うんだな… 「別に食べなくても支障はないんだけどね」 何だこいつ。頭の中まで読めるのか。 訝しげに見詰めると、こいつは可笑しそうにくすくすと笑いを零した。 「口から出てたよ、考えてたこと」 「え…あ?まじか…」 「うん、ご馳走様」 空になった丼をテーブルの隅に寄せ、真っ赤な瞳を俺へと向ける。 …やっぱ顔だけはいいなこいつ。 そんなことを考えていると、臨也は何が楽しいのかうっすらと笑みを浮かべながらその唇を開いた。 「とりあえず君の名前を聞かせてよ」 (…平和島、静雄だ) |