Thank you!
珈琲より甘味な時間を。





ほんのりと芳ばしい香りの漂う店内、目の前で眉を寄せながら必死に目の前のそれと格闘している我が恋人に思わず苦笑が零れた。


「…何を笑っているんだ!」
「いや、別に?」


俺の笑いに気付いたらしく日々也は顔をあげるなりギッと鋭い視線を投げ掛けてきた。


この某珈琲店に入ってから既に一時間近くが経とうとしている。


それだというのに目の前の人物が必死で格闘し続けている珈琲は一向に無くなる様子がなかった。


「うう…に、苦い…」
「それフラペチーノだろ?こんな甘いもののどこが苦いんだよ」


味は違えど甘さ的にはココアにも近いそれをちびりちびりと飲み進める恋人の様子に再び苦笑が漏れた。


ったく、王子だなんだと言いながらも結局はまだまだお子ちゃまだな。


「ほら、貸せ。俺が飲んでやる!」
「なっ…!じ、自分で飲めるっ…」
「んなこと言いながら何時間経ってんだよ。ほら…新しくココア買ってやるから…」
「だ、駄目だ!」


しびれを切らし手を伸ばすも日々也は俺の手が届かない場所へとそれを持ち上げ、ブンブンと首を左右に振った。



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続きます→