アルコール漬け(ss4編)(aph+創作1)
2015/03/29 21:43

アーサーside――

「お嫌いですか、コーヒーは。」

にこり、と微笑むカフェの店員に
非がないのは俺も承知はしているが。

「ああ、嫌いだ。」

と、伏し目がちに嫌悪を示しておいた。


カラコロとなるドアベルとともに
ドリップしたコーヒーの香が
広まっているのを感じた瞬間。

咳き込んでしまった俺に
店員はミネラルウォーターを
差し出したものだから
好意を無下に断るのは
紳士らしい振る舞いではないと思い
ボトルを受け取って席についてしまった。

そして冒頭の会話。

店員は黒髪を耳にかけたあと、

「日本ではコーヒーを出すカフェのほうが
多いですから…気を付けてくださいね。」

ともう一度微笑む。

「…邪道かもしれませんが、
フルーツティーなら、」

趣味なんです、と続けて
断る暇なくカップに紅茶を注いだ。

「…どうぞ。」

甘い香り。
コーヒーよりマシで何処か不思議な。

こく、と喉に流し入れる。

舌からのサインは
多分美味しいの信号だろう。

「、甘いな。」

「ええ、甘いでしょう?
焼酎で割るんですから。」

「…焼酎?」

怪訝な顔にうつるだろうか、彼の目には。

いや、でも彼は、焼酎と。

「夜に寄ってくださいな。」

そうしたらわかるはずですよ、と続けて。

「いや、でも。」

おかしな気分だった。
彼は、何故、自分を。

「…いいじゃないですか、少しくらい。」

ジョークですよ、と彼が返すので

「じゃあ、よろうかな… マスター。」

と返事をかえす。

彼は少し驚いた後、

「それはジョークですね?」

と笑った。


酔ってください、夢物語。


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フランスside――

"寝る前の酒は安眠効果があるぞ"

…そんなお前の言葉で安眠効果なぞ
消え失せた透過する紅をぼぉ、と見つめる。

「体が火照るだけなんだけどなぁ…。」

届くわけもない憎まれ口を叩いて、
酒のお陰で気分をよくした俺は庭へでて
少し夜風にあたることにした。

「…真面目にアドバイスするか、フツー。」

"最近、眠れないんだよね"
ほんの少しの色気つきの相談。

…気づいていたのかもしれないけど、
あの答えは。

「…ないわ。」

くるり、家に戻ろうとすると
左ポケットのケイタイが光った。

"忘れていたが、無論、適度の酒だぞ"

やけ酒しようとおもったら之だ。

よまれてるよな、俺…。

「わかってます…よ、と。」

次の日、二日酔いだったら笑えないし。

俺は忠告に従った。


あんみんこうか(酒より君)


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日本side――

「かるーあみるく?」

「うん。日本にピッタリだよ。」

甘ったるい香りをただよわせて、
フランスさんは私をよんだ。

多分、彼がのんでいたのは
カクテルじゃない。
ワインに違いなかった。

「生憎、私は梅酒程度の爽やかさがないと
甘いお酒は飲めないんですよ。」

自分だけワインを飲んで何を、とも思っての
意地悪でもあった。

「えー。」

唇をとがらせて、
ワイングラスの縁をなぞる。

艶っぽい行為に顔が赤くなるけれど、
幸か不幸か、私は一口お酒を含んでいる。

「えー、ではありません。
そもそも、貴方がカクテルをつくる、と
仰ったから、
私は此処にきたんじゃありませんか。」

呆れて私は
スパークリングワインを口に運んだ。

「…だから、作るのは俺だよ。」

カルーアミルク、と貴方は囁く。

甘ったるい空気ごと
何処かへ連れ去ってくれないだろうか、
と私は思った。


綿菓子のような白雪姫(カルーアミルク)


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男side――

「なあ、女。」

[どうかしたの、男?]

香水の香り。
少し前までつけていた柑橘系の制汗剤は
女にリストラされたらしく、
俺の所にまわってきた。

「…お前さ。」

"お酒と煙草の匂いがこの方が消えるから"
悲しく笑った女は数週間前の、女。

今は、別人というか。

[…なにその顔。]

俺の顔が深刻だったんだろう、
女は声をあげて笑った。

[…変なの。]

頬に手をあてて女はひとしきり笑ったあと

[大丈夫。
飲んだとしてもカシスオレンジだけよ。]

と微笑んだ。

「冗談じゃないだろうな?」

じろり、と睨むと女は笑った。

[やめてよ、キャラじゃないよ。]

笑いすぎたらしく、女の呼吸からは
すきま風のその音。

「…悪かった。」

懺悔を何度しても俺は。

[…カシスオレンジ。]

「え?」

[つくってよ。]

俺の顔を覗きこんで泣きそうな顔で
女はいった。


甘い幸せな家庭を(カシスオレンジ)







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