ボツ作品(aph)
2014/07/26 20:05





一人の男の子はこう言いました。


【この世界はなんて綺麗なんだろう】


と。


一人の男の子は歌をききました。

そして、こういいました。


【あの声はなんてすてきなんだろう】


と。


一人の男の子は絵画をみました。

そして、こういいました。


【あの色はなんて美しいんだろう】


と。


その男の子は驚きました。


男の子の世界とは全く違う世界が
其処にはあるということに気がつきました。


一人の男の子は箱の中の戦争をみました。

そして、こうといました。


【あの赤い色はなぁに?】


と。


大人たちは静かに微笑みながら


【あれは血だよ】


と、答えました。


その色がどんどん地面にこびりつき
黒くなっていくのが
男の子にはわかりました。


理由もなしに
怖くて、怖くて、
そばにあった人形をぎゅ、と
抱き締めました。


その瞬間、その人形が
はじめて抱き締めたときよりも
黒くなっているのが、わかりました。


どんどん、どんどん、どんどん、黒く。


その男の子は自分の世界が
壊れていくのが怖くて、

こうさけびました。


【たすけて!】


と。


男の子の世界はがらがらと音を立てて
崩れてゆきました。



桜色舞う、春。

例えばあの人の噂とか。


例えば誰かの死体とか。


桜の下には色んなモノが
埋まっているのだと、人々は言う。


桜が美しい故にそういわれるのか
嫉妬故にそういわれるのか
もしくは、
それ故、美しく儚いのかもわからない。


兎に角、
美しい桜を愛でながら
皇居のお堀周りを歩く
黒髪の男がいたのです。

その名は
【本田菊】

「……良かったです、貴方がくる前に
葉桜にならずにすんで。」

隣にいるのは
【ギルベルト・バイルシュミット】

赤い瞳に銀髪の男。

今はその銀髪は帽子によって
隠されてはいるが。

「しっかし…凄いよな、この人の多さ。」

少しばかりあきれながらも
懐かしいというように彼は微笑む。

「えぇ。意外に
変わっていないのかもしれません。」

菊がふわり微笑む。

桜に夢中の人々はなかなか
菊には気付かない。

ときおり、腰の折れた老人が
菊をみて懐かしい友人と再会したかのような
微笑みを菊にむけるくらいのものだ。

「…綺麗だよな。」

「えぇ。」

はらはらり、
儚く舞う桜の花弁を
ギルベルトは手のひらにのせた。







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