妄想シンドローム(創作)*NL
2014/04/29 11:35

「なぁなぁ、篤史!」

「…どうした、けーと。」

今日は
バスケ部の練習がはやくおわって
他のメンバーはファーストフードを
食べることに意識がいっている。

【健康のこと、考えろよ】
とはじめは注意していたけど、
今は効き目がないのだ、と悟ってやめた。

「唯ちゃん、
めちゃめちゃかわいくなったよな!最近。」

「…え?」

突如、出てきた名は幼なじみの名前。

「俺さー、やっぱ、唯ちゃんみた」

「けーと。俺、帰るな。」

「え、ちょ、おま。」

「皆、お疲れ様でした。」

そういって、荷物をひっつかんで
部室を駆けだした。
なんたって、唯の姿がみえたから。


「…ゆいちゃん。」

……ま、間に合った。

俺が守らなきゃいけない人の姿を
とらえた。

「……!た、たか先輩ッ!」

ほんの少しの動揺が
彼女の語調にあらわれる。

いつからだろう、
こんな風に、距離をとられるように
なってしまったのは。

「だぁーかーらー
たか先輩はやめろってば。」

まわりはあつし、だの
あっくんだの、こーむら、だの
からかってよぶのに、
たか先輩、とよぶのは彼女だけ。

それがなんだか歯がゆくて、
……特別なようで、悲しい。

「たか先輩も、ゆいちゃん、は
やめてください。」

それだけはどうしても駄目、なのだ。

俺が【ゆいちゃん】という呼び方を
やめたら、彼女はなんの未練もなく
【ゆい】という名前を捨てて
どこかにいってしまうきがするから。

「嫌。」

そうやって、すぐさまこたえた。

「じゃあ私もたか先輩呼びは
やめませんからねー!」

ニコニコ顔の彼女が、
やけに痛々しかった。

「…そういえば、さ。」

新たな話題をさがして、
俺はいったん、沈黙をつくる。

「………。」

「………。」

俯きながら、話題を探す。

何処にも、話題はおちていない。

するり、とでたのは偽りだった。

「…けーとがゆいに告白したって
ほんとう??」

何でも、良かった。
正直。何でも。

話題に、なるなら。

でも、何故か俺は恋ばなを、
そして親友を巻き込む嘘をついた。

なぜ、だろう?


頬を紅に染めたゆいは
なかなか返事を返さない。


せかすように呟いた。

「…ほんとなの?」

と。

「そんな事実は何処にもないよ。
てゆうか、あるわけないじゃん。
私、モテないし…」

今度は彼女が俯きながら、
俺の嘘を否定した。

当たり前。

当たり前のことなのに。

「……、騙された。」

また、偽りがでる。

「まぁ、変なのに騙されんなよ!」

ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃ、
ゆいの髪をひっかき回して。

自分の嘘を、隠した。


そして、最後の最後に

「…俺と、結婚するんだから。」

彼女を苦しめる、本当のことをはいた。


妄想シンドローム


嬉しいのも偽りで、
寂しいのも偽りなら、どれだけ楽だろう。

彼女が俺を好きなわけはないんだ。
彼女は俺との思い出に
恋をしているだけなんだ。

彼女が、彼女が、
俺のせいで本当の気持ちを
押し隠しているとしたら、
俺は悲しさで
どうしたらいいか、わからなくなる。




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