「ねぇ志摩くん…。奥村くんって、やっぱり好きな人とかいるのかな…?」
きみはいつも俺じゃなくて、彼のこと見とるんやね。
きみは、俺の気持ちも知らんと、いつも奥村くんの話ばかりしはる。
「相変わらず奥村くんのこと好きやね。告白しはったらええのに」
ほら、また俺は思ってもいない言葉を吐く。
告白してみろ、どころか、彼女が他の男の話をしてはるだけで、こんなにも気が狂いそうやというのに。
「むっ、無理だよ…」
そう言って頬を赤らめ、俯く彼女が素直に愛おしい。
「なんで?こんなにかいらしい顔しとるのに。性格も良くて、良いお嫁さんになりそうやわ」
「お嫁さんって」
話が飛んでるよ、志摩くん。なんて笑われて、嗚呼やっぱり笑った顔もかいらしいなあ、なんて。
どれだけ俺は彼女に溺れとるんやろう。
「志摩くんは、好きな人とかいないの?」
突然放たれた質問。
……好きな人、か。
それはきみだと、そう言ってしまえたらどれだけいいか。
「……志摩くんはな、好きな人はおらへんよ。その代わりにきみと好きな人が上手くいくよう応援したるさかい」
今日も俺は、嘘を吐く。
「あ、ありがとう」
この笑顔が見たくて。
そして今日もまた、その笑顔に恋をする。
今日もまた俺は恋をする
(それが君にとって、)
(優しい嘘になればいい)
(君のことが好きだとは、)
(もう言えない)
▼素敵な企画を開き、参加の機会を下さった片君うずみ様と読者様に感謝と愛を込めて!
素敵な作家様方と作品を並べられて幸せです!