喧嘩した。
またしょうもない事で喧嘩してもた。
ていうかこれ喧嘩か?
なんせ、あてと金造の間に溝が出来たのは確かな事や。
事のはじまりは、あてが金造にお前すきなひとおるんかって聞いた事や。
金造はなんとも言えん顔でそないな事聞いてどないするんやって言いおった。
別にあてら年頃なんやし、恋の話題なんざ普通やろって言うたら
これまたなんとも言えん顔でそうかって呟いて黙りおった。
ほんまはあてが金造のすきなひとが誰なんか気になっとっただけやけど。
やましい気持ちなんてありありや。
やってあて、金造の事すきやもん。
ずっと黙っとった金造に、で、すきなひと誰なん?って催促したんや。
金造は少し考えてから、いつも一緒におって、小さくて、表情がよおころころ変わるやつ、って言うたんや。
あてはそれを聞いて、誰の事か分からんから、それ誰の事言うてんの?って聞いたんや。
したら、なんや金造は目を目一杯開いたあと、ほんまに分からんのか、って言うた。
ほんまに分からんから、聞いとんねやって言うたら、眉間に思いっきり皺を寄せて、ほならもうええって言い捨てて去ってしまった。
取り残されたあては、口をだらしなく開けたままつっ立っとったちゅうわけや。
正直意味分からんけど、あそこまで金造があてに対して怒るのは久々やなと思た。
えげつない言い争いをしても、どうせ明日になったら忘れとる。
いつもそうやねんから明日もそうやろ。
そう思てたんやけど。
「おはよう」
「…」
金造はじろりとこちらを見てから、ぷいとそっぽを向いて早足で引き返していった。
なんやねん、その態度。
「金造、」
名前を呼ぶとぴくりと立ち止まるが、それでもすぐに歩き出す。
「金造、待ちい」
あてかて、いつまでもそないな態度取られたら我慢ならん。
駆け寄って金造の袖を掴むと、やっぱりなんとも言えん顔でこちらを向いた。
「なんや」
「なんやもないやろ、何で無視するん?あてがなにしたんかちゃんと言うて」
すると金造はこれまた目一杯目を見開いて、困った顔をした。
ほんま、なんやの。
「…お前、昨日誰の事言ったんかほんまに分かってへんのか?」
まだ言うか。
「分からん」
「…お前や」
「は?」
それ、どういう意味。
「俺のすきなひとはお前や、この鈍感」
軽く頭を小突かれる。
金造、顔、真っ赤やないの。
そういうあても、真っ赤やけど。
「で、お前のすきなひとはだれなんや」
「…金髪で、あてより背が高くて、今顔真っ赤なやつ」
そう言うと、金造は阿呆と言うて、抱きついてきおった。
割れた愛のゆくえ
(つまり、両想いやった訳で。)
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「志摩うま」様に提出
素敵な企画ありがとうございました!