老婆
【森の中】
老婆「全くあやつはどこにいったのじゃ…」
カラン…
カラン…
カラン…
老婆は手に持った杖を地面にひきずるようにもつ。
その杖がまるで老婆の話に対し、返事をするような音を立てていた。
森の中を一人、杖を持ち不気味に歩く老婆が一人。
老婆「全くあいつはどこにいったのじゃ…」
カラン…
カラン…
カラン…
引きずられる杖が不安を掻き立てる。
老婆「せっかく助けてやったというのに、期待をあっさり裏切りおって…」
カラン…
老婆「今度という今度は、絶対服従にさせてやろう…」
不敵な笑みを浮かべる。
顔はしわくちゃで、足取りはただの老人そのものだったが、眼だけは蘭々と赤く、鋭く輝いていた。
カラン…
老婆「お前の行くところなど、お見通しなんじゃよ…。どうせ会いに行っているのじゃろう?お前という男は…」
老婆の足はゆっくり…ゆっくりとどこかへと向かう…。
ニヤリと笑う老婆の顔に浮かぶ赤い眼、ふたつ。
何を企む。
老婆「ホッホッホ…。お前らがいつまでも、勝者だなんて舞い上がるのは…舞い上がっていられるのは…」
カラン…
ぶつぶつと話していた老婆が突然声量をあげる。
老婆「今だけじゃ!!」
鳥が鳴き、慌てふためいて逃げて行く。
カラン
カラン
カラン
カラン…
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