フード



姫「はー、今日も疲れたなー」 

王家となれば、一日に様々なことを行う。 
現代政治や音楽、市民との交流も立派な仕事だ。 

最近、体調がよくなったのもあり、三年前……皇子が亡くなる前の生活を取り戻し始めていた。

なぜ、体調がよくなったのか。 
それは、姫本人はなんとなく察しがついた。 

しかし、周りはさっぱりだ。 
姫が体調が悪かったのは心的問題。
最近、それが解消されるような原因があったか、全く誰にもわからない。 

しかし、最近の姫の妙な行動に少なくとも関連があるとは、誰もが思ったことだった。 

姫「今日はきてくれるかなー」 

なにを待つのか、姫はずっと部屋にある窓から外を眺める。 
待ち人は誰なのか、なんなのか。 

本人以外には誰なのか以前に、存在すらも知られていない。

??「こんばんは」 

姫「ふえっ!?」 

突如窓枠の上から、フードをかぶった男が現れた。 
顔は…眼が見えない黒いゴーグルに口を覆う布。 
男性なのか、女性なのかすらわからない。 

声だけがその人間を男だと判断できる材料。
その男であろう者はひょいっと、体を回し足から部屋に入ってくる。 

姫「ねーねー!今日はどんな話をきかせてくれるの!?」 

姫は待ちきれず、部屋に入って座ってすらいない男に話しかける。 
男はまてまて、といった動作をし一息ついてから、ベッドの前の床に座った。

姫を喜んだようにその男の前に。 
ベッドの上にちょこんと、座った。 

2人にとって、何度めのことなのだろう。 
男はあぐらをかき、話を始める。 

男「そうだね。じゃあ、今日はタムタム少年の話でもしようかな…」 

男はなんのためにここにいるのか。 
それは、この口ぶりをみれば一目瞭然だった。 

お父様「それでね、タムタム少年はある人と出会ったんだ!」 

時折、大きく腕を広げたり、声に強弱をつけたり。 
救いのある、楽しい希望のある話を姫にむかって話し続けていた。

姫もとても楽しそうにその話しをきいていた。 
時には神妙にときには、オーバーすぎるくらいの反応を見せる。

男は楽しませようとしていた。 
姫の病気を知ってか知らずか、楽しませようと必死だった。 

そして、なにより… 

なにより、本人も楽しそうだった。 





彼がなにものか。 

彼はゴーグルをとらない。 
マスクもとらない。 
フードもとらなければ、絶対に肌など見せたりしない。 

姫は彼のことをどれほど知っているのか。 
彼は姫のことをどれほど知っているのであろうか。 

そんな不思議な関係。 
お互いがお互いをわからないまま、2人は楽しく語らっていた。 


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