描く姫



【王城】 

姫「お父様ー!」 

王「おお、姫よ。どうした?」 

姫「久しぶりに絵をかいて見たの!どうかしら…?」 


そういって、姫は王にむけて一枚の絵を見せた。 
絵に描かれているのは、端正な顔をした男性。 

しかし、その男の顔は欠けている。 
耳がない、髪がない、腕がない。 
かろうじて、その絵に描かれているのが王子だとわかるレベルだ。 

王「お、おお…。上手になったな…」

王はかろうじて、言葉を取り繕う。 

姫は最近、ずっとこんな調子だ。 
なにか絵をかいたと思えば、いつもどこか欠けている絵をかく。
まるで、何かが欠けているのが美徳のように。 

体調がよくなることは嬉しい限りだが、どうしてもこの姫の様子には不安ばかりが募った。 

姫が大事そうに絵を抱えて、部屋を去って行くのをみて執事が口を開いた。 

執事「…王様。どうかされましたか?」 

王様「…理由を分かっていながら、聞くのは野暮でないか?言いたいなら、はっきり言え」 

執事「…失礼いたしました」 


少しの沈黙が空気を沈ませる。 
ゆっくり考えたあと、執事はもう一度口を開いた。 

執事「やはり、姫に監視役をつけた方がよいかと…」

あれだけ様子がおかしい姫をみれば、誰でも不安になる。 
不安になる…というよりは姫が心配なのだ。 

なにか、変なものに取り憑かれてるんじゃないのかと。 

王もそれには同意見だ。 
しかし、自慢の娘に監視をつけるにはどうしても、抵抗があった。 

王様「考えておく」 

王は一言、そういった。 


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