悟る
老婆「……もう、分かったじゃろう?」
老婆の長い昔話が終わりを告げる。
王はその話に対して、なにも答えらることが出来ない。
老婆はそんな王の様子は気にも止めず、男に言う。
老婆「……時間じゃ、今日の分の進行抑制剤を飲みのじゃ」
その指示に従い、男は剣を下ろしポケットからだした薬を一錠のみこむ。
王「……お前たちはその薬で生きながらえていたのか?」
その様子を見た、王は問う。
老婆「そうじゃよ。三年前にとうとう両腕が腐り落ちたときにはどうしようかと思ったわい」
その言葉に王がぴくりと反応する。
王「三年前……?」
老婆は質問に答える。
老婆「そうじゃよ。まさか、自分と同じ姿をしたものに助けられるとは思わなかったわい」
ちらっと、横目で男を見ながら話す。
男はこれに対し、口を開く。
男「助けてもらったのは俺の方だ。あんたがいなければ、今頃とっくに死んでいた」
2人の会話を聞く王は気づく。
驚いた声を男に向けた。
王「……まさか」
男「お久しぶりですね、王」
そんな王に対し、男は冷たく素っ気なく言葉を返した。
王の顔が絶望の色に染まって行く。
三年前にいなくなったはずの王子。
元団長である実力者の執事を殺した化け物。
そして、力なく立つ自分の娘。
王は全てを悟る。
王「なぜ…なぜ執事を……?」
察した王の一言目は問いかけ。
その言葉に男は少し反応を見せた。
男「……ッ」
苦々しい顔をする男に向け言葉を続ける。
王「お前と執事は……実に仲の良い師弟だっただろう?」
王は問う。
王「なぜ……なぜなのだ?」
本当に困惑し、嘆く姿に男は我慢ならず叫ぶ。
男「うるさい!黙れ!!」
そして、怒り狂う。
男「お前らは俺を化け物だと決めつけて、何をした!?あの執事も同じだ!」
そんな男を静止させようと、老婆が男へ言葉を向ける。
ここで、男に経たに動かれればせっかくの計画が台無しになってしまう。
老婆「落ち着くのじゃ!」
しかし、男が止まることはない。
男「俺だって、執事を信じていた!」
そんな男が叫んでいる最中、その言葉に反応を示す人物がいた。
男「執事にすら裏切られるなんて、考えもしなかった!」
反応を示したのち、呟く。
「……しつ…じ?」
小さく、誰にも聞こえない声で呟く。
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