昔話



時間はおよそ、50年ほども前に戻る。 
そのときはまだ、姫など生まれてすらいない。

そんなとき、村にある人型の化け物が現れた。 
その化け物は身体が腐るような外見をしたモンスター。 

しかし、誰もが化け物だと思ったそれは、不治の病を抱えた、人間。

体が徐々に腐り。
髪が抜け、耳が落ち、腕が取れ、足がもげる。 
最後には目がこぼれ落ち、死に至る。 
誰も眼にしたことのない不治の病。 

本来ならば、様々な人から最大限の同情の意を受け、病床で死に行く運命なのだろう。 

しかし、あろうことかその村の人々はその行動とはかけ離れた行動を起こした。 

村をあらす化け物だと、罵ったのだった。 
行方不明になった女を連れ去った化け物だと罵った。

罪もないその不治の病の女は必死で叫び、抗議する。

その行方不明になった女こそ、自分だと。 
モンスターに襲われたあと、訳のわからない病に陥った。 
そして、気づくと全身が腐り、こんな姿になってしまった、と。 

女は必死だった。 

大好きだった村人たちはきっと受け入れてくれる。
静かに病床で死んでいけると。 
必死に抗議すれば、そんな結果が得られる。

そう思っていた。


だが、女の予想は見事に裏切られることとなった。
村人は誰一人信じない。 

仲の良かった友達。 
最年長の長。
近くに住んでいた叔母さん。 

そして、家族、兄弟すらも。

最後まで、化け物だと罵り町から追いやった。 

罪もなく村を追いやられた化け物は思う。
必ず、復讐すると。 

あの村に絶望を味合わせると。 
心の奥底に、誓う。 


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