叶う
兵士「……どういうことだ?」
隣にいる兵士にきいても、首を振るだけだった。
探し出した老婆は王城に連れて行かれることを嫌がるどころか、喜んだような反応を示した。
老婆「やっとじゃ、やっと……」
そして歩かされる間、何かをずっとブツブツとつぶやき続ける。
兵士たちには、なにも理解できない。
扉の前につき、先頭にいた兵士が軽く手で叩いた。
中から、王の声が聞こえる。
王「老婆だけを中に入れろ!」
先程といい、王の指示は明らかにおかしかった。
しかし、兵士2人は渋々その指示に従う。
老婆の体を掴んでいた手を離す。
兵士「入れ」
扉を開けると、老婆は1人部屋に入って行った。
扉が閉まり切ると、物陰から男と姫が姿を表した。
男「部屋から離れろと、部屋の前の兵士に言え」
王「……扉の前の兵士よ、この部屋から少し離れていろ」
指示に従い、外に聞こえるほどの声で言う。
部屋はしんと静まり返った。
怒りを露わにし、恐ろしいとも言える表情の王。
不適に笑い続ける、不審な老婆。
だらんと力なく、剣先を向けられる姫。
無表情、冷たい目をした片腕の男。
王「……貴様ら、何者だ」
そんな中、王が沈黙を破り、声を発する。
数秒の沈黙。
老婆「ふぉっふぉっ、せっかくの最後じゃ。教えてもよかろう……」
そして、老婆が笑いながら嬉しそうに言った。
老婆「ちょっとした、昔話をのう」
この上なく、嬉しそうに老婆は語り出す。
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