【王城】 

姫「離してよ!」 

兵士「姫様!今行くのは危険すぎます、おやめになってください。」 

部屋の中、姫と兵士が言い合っていた。 
わけもわからず、危険だからと強引にここに連れて来られたのだ。 

姫「あの人は悪い人じゃないわ!いい加減にして!」 

止める兵士の言葉には耳も貸さない。 
ただ、兵士もこればかりは一歩も譲らない。 

兵士「なんと仰られても、こればかりはいけません!」 

姫に何か怪我でもあれば、一大事なのだ。 
そんな姫に化け物に襲われて、大怪我をさせたなどとなれば、申し訳が立たない。 

しかし、兵士が思っていた以上に姫も必死だった。 
部屋からだしてくれないと判断した姫は予想外の行動にでた。 

姫「怪我をしたくなかったら、この部屋からだしなさい!」 

護身用にいつでも持たされていたナイフを兵士達に向ける。
姫の眼がそれを本気で言っていることだと物語っていた。

姫「早くそこの扉の前から、どきなさい!」 

兵士たちはうろたえる。
おとなしく、姫に刺されるわけにもいかない。 

しかし、だからといってナイフを奪おうと怪我でもさせれば…。
それでは、あの化け物から逃げてきた意味がない。 

じりじりと、近づいてくる姫に対して兵士は身動きが取れずにいる。

どくわけにはいかない。 
しかし、手を出すこともできなかった。

兵士「ひ、姫様。おやめください。危険すぎます!」 

姫「うるさい!あんたたち、ここからでるんじゃないわよ」 

どうしようもないと判断した兵士は、団長が化け物を倒したことを祈りながら鍵を渡す。 

姫「おとなしくしてなさいよ!」 

奪うように鍵を取りそう言うと、扉を閉める。 
鍵をしっかりかけたあと、姫は自分の部屋へと駆け出していた。

部屋の前につくと、扉は閉まっていた。 
まだ、周りは荒れた様子もない 

中から、特に物音も聞こえなかった。 

姫は少し安心していた。 
この様子なら大丈夫だろうと。 

もし、暴れ回っていたとすればもっと荒れているはず。
物音もしているだろう。 

姫「あ、あけるわよ!」 

少し緊張気味に、扉の取っ手に手をかけた。 
しかし、そこにはありとあらゆる絶望がつまっいた。 



姫「え…?」 



現実を受け入れられず、思わず口から漏れる。
扉を開けた目の前に広がっていた。

荒れ果てた元の姿すらわからない、部屋に倒れている幾人かの兵士たち。 
そして、部屋の中央にいる優しく、楽しい話をしてくれていたはずのフードの男……


その先には剣が握られ……


その先は……


その先には、腹を貫かれた人間が立っていた。 

見知った男。 
すっかり年をとったその男。 
子供の頃から遊び、話し、優しくしてくれた。 
家族同然の執事。



その大好きだった、執事の腹を男が貫かれていた。

姫「あ、あああ……」 

様々な感情が入り乱れ、言葉にならない。 
一言で言うなれば、絶望を味わっていた。 

三年前、起きた王子の死を癒してくれたはずの男。 
その男が再び、姫を絶望へとおとしめる。

フード男「ひ、姫…!」 

フード男…否、化け物が姫に近づこうとする。 

姫「こないで!!!」 

それは絶叫に近いものだった。 
眼は恐ろしいほどに、鋭く憎しみに満ちている。 

フード男「こ、これは…」 

姫「うるさい!!!」 

全てを拒むかのような姫の声に化け物は恐れをなして、近づこうとした足を引いた。 
姫は絶叫するかのように、つづける。 

姫「もう近寄らないで!!出ていきなさい!!!」 

有無を言わさないその言葉が響いた。 
普段、元気で明るかった姫からは想像もつかない声。
さらに言葉を続く。

姫「この城にもう近づかないで!!この…」 



姫「この…化け物!!!」 


姫の最大音量の絶叫が城内に響き渡った。 


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