笑う少年



【12年前-兵士訓練所】 

兵士団長「…君はなかなか筋がいいですね」 

多くの兵士が訓練している中、団長が目を付けたのはまだ、12、13才ほどの少年。 
端正な顔つきの少年は明らかに年上の兵士相手に良い動きをみせていた。 

少年「あ、そうすか。ありがとうございます」 

年上の訓練士を当たり前のように、手で静止させ彼は笑いながら答える。 

兵士団長「ただ、自分の癖をもう少し研究した方がいいかもしれないですね」 

技術自体はなかなかですからね、と兵士団長は言葉を続けた。 

少年「はい!兵士団長様に話しかけられるなんて、運がいいなー」 

そんなことを言って、少年は笑う。 
どこかふてぶてしい態度も、相手をイライラさせない、そんな雰囲気があった。 

兵士団長「ふふ、そうかもしれませんね」 

王国に数が多すぎるくらいいる兵士。 
しかも、訓練を毎日見に来れるわけでもない。 
そんななか、兵士団長に話しかけられるなど、そうそうあることではないのだ。 

兵士団長「では、頑張ってくださいね」 

兵士団長は背を向け立ち去る。 
このときはまだ、ただなんとなく目についた。 
それだけだった。 

少年の嬉しそうな大きな返事が、兵士団長の背中に響いた。 


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