代役
【王城】
執事「化け物?」
執事が問う。
兵士「人間とはかけ離れている姿、と報告が…」
執事「……」
沈黙が流れる。
この辺りはモンスターが多い。
一歩、王国の外に出ればあっさり食い殺されることすらある。
そのため、安全対策として近隣のモンスターを調べ上げた経緯があった。
粗方のモンスターなら、検討がつき対処法があるのだ。
執事「姫は…?」
しかしながら、今回現れたモンスターは『化け物』と兵士から報告を受けた。
モンスターではない、『なにか』。
兵士「安全な部屋に移動して頂きました」
人間並みの知能を持ち、モンスター並の身体能力をもった『化け物』。
対処法など、存在する訳もない。
執事「そうか…」
執事は少し考え込み、座っていた椅子から立ち上がる。
顔には決意の顔が浮かんでいる。
執事「私が出る」
一言。
報告をしていた兵士は驚いた表情をみせた。
兵士「元兵士団長のあなたがですか!?」
執事「……今、お主らはやられっぱなしなのでしょう。数ですら圧倒できない力」
それがあの化け物にはあるのです。
そう言った。
執事「一泡吹かせて、退散させれば姫の身は保証される。なんとしても、私が食い止める」
執事……団長だった男の眼は強く鋭い。
姫様を危険な目に合わせるわけにはいかない。
王子が亡くなった今、彼女は必ずこの国に必要な存在。
モンスターなぞに、奪われてはならない。
そして、個人的に彼女の友人、家族として。
彼女を失うわけには絶対にいかない。
しかし、それでもなお思う。
こんなときに、兵士団長であった王子がいれば、と。
素早く編隊を組み、軽やかに化け物を追い払っていただろう。
…だが、無い物ねだりは仕方が無い。
執事「今日は私が王子の代わりを勤め上げる」
確固たる決意を口にした。
化け物の元へと向かう。
[ 7/28 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]