仲間



あれだけの屈辱を浴びたのに結局、何もなかった。
ただ蜜があったから運んでいただけのようだ。
とんだ損をした。

次の目的地へ行こう。
ニンゲンに襲われた場所だ。
確か、この森を抜けた先だったはずでそろそろ着くはずだ。
あいつは捕まっただけだから、恐らく何もないがどんな小さな事柄でも今はほしい。
俺は思いつつ、辺りを見回した。
何もなさそうだ・・・・・・そう思った瞬間背後から葉の擦れる音がした。


弱ったカブトムシ「くそ・・・・・・。なんてこと・・・・・・だ」

G「おい、どうした」


顔を覗き込むと、そいつは捕まったはずのカブトムシだった。
あいつはニンゲンによって捕らわれたはずだ。
どうしてここに・・・・・・。


弱ったカブトムシ「っく・・・・・・。ゴキブリか、お前に話す価値などない」


弱ったカブトムシは掠れるような声で言った。
確かにゴキブリになんかやられた理由を話すのは屈辱だろう。
しかし、どうにかして俺はこいつの話を聞かなければならない。


G「お願いだ、教えてくれ。 俺には必要な情報なんだ」

弱ったカブトムシ「何言ってやがる。 嫌だと言ってるだろう・・・・・・」

G「・・・・・・頼む」


俺はなるべく誠実に聞こえる用懇願した。
ゴキブリにこんな頼みごとをされたのは初めてだろう。
弱ったカブトムシもその態度に少し好感を持てたのだろうか?
嫌々ながらも事情を話してくれた。


弱ったカブトムシ「・・・・・・ニンゲンの振った網の鉄の枠の部分に当たったんだ。そして木に叩き付けられて、この様だ」

G「・・・・・・」

弱ったカブトムシ「くそ!ゴキブリに見取られるとはとんだ人生だ。 あいつが少しでも助けてくれれば・・・・・・」


カブトムシはそう言うと、息を引き取った。
俺はその場からすぐには離れられなかった。
カブトムシの最後の言葉の『あいつ』とは俺のことだろう。
こいつは俺のせいで死んだのだろうか?

違う。
・・・・・・俺が飛び込んだって何も変わらなかった、そうに決まってる。


G「・・・・・・くそ!」


俺は弱ったカブトムシと同じ用に悪態を付いた。


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