長老



とりあえず、夜まで様子を見た。
どうやらニンゲンは寝静まったようだ。
これなら外に出れるだろう。
俺は夜行性だし、あの時間に起きたこと事態が稀だ。
これならそんな心配もいらず外出できるだろう。

そう思い、この暗闇から出ようとすると後ろから声がした。


長老G「・・・・・・どこに行くのじゃ」


年老いたゴキブリが影から出てきた。
俺は咄嗟に嘘をついてしまった。
なぜだか、このゴキブリにだけは言ってはいけないことだと思えた。


G「あ・・・・・・いえ、散歩に」

長老G「ほう・・・・・・わしは嘘がきらいじゃ」

G「・・・・・・」


ゴキブリの癖に、俺の全てを見据えているかのようだった。
俺は元カブトムシで、こいつから逃げようと思えば逃げれただろう。
ただ、このゴキブリだけはそれが出来ない、そんな気がした。
仕方なく、真実の話をすることにした。
俺は少し小さな声で口から真実を語り始めた。


G「俺は元カブトムシなんです」

長老G「カブトムシ・・・・・・?」

G「俄かには信じられないかもしれませんが、元の姿に戻るためにここを出ないといけないんです」

長老G「・・・・・・」


年老いたゴキブリはすぐには返答しなかった。
俺にその見え透いたような目を向け、間を置いた。
何秒も何十秒も俺の目をじっくりと見た。
俺がそれに耐えれなくなり、何か言おう、そう思う瞬間まで年老いたゴキブリは何も言わなかった。


長老G「・・・・・・いいじゃろう。 行ってきなされ」


年老いたゴキブリが突如として言った。
まさか信じてくれたのだろうか?
正直に話したものの、絶対に信じてはくれまいと俺は思った。
少なくとも、俺ならこんな馬鹿げた話を信じないだろう。
俺はこの年老いたゴキブリにお礼言いながら、暗闇から駆け出した。


長老G「・・・・・・頑張るのじゃぞ」


後ろで小さく年老いたゴキブリが応援してくれた気がした。


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