虫相撲


……うん。
なんつーか、まあ、巡り合わせが悪かった…。
こんなはずじゃなかった。

少年A「おーい!カブトムシ捕まえたぜ!」

……捕まった。
カブトムシに戻った瞬間これだよ。

俺はとんでもないバカだ…。
底抜けのバカだ…。あんぽんたんのトンチンカンのクルクルパーだ!!

もう嫌だ、死のう…。


少年B「まじかよ!じゃあ、相撲させようぜー。」


そういうと、少年たちが俺をいれた籠を持ち、移動し始めた。


元G「おいおい…勘弁してくれよ…」


かごがぐわんぐわん、揺れて気持ち悪いことこの上ない。

数分で空き地のようなところまでつくと、ダンボール箱の台を用意し始めた。
真ん中には丸い円がマジックで描かれている。


少年B「じゃあ、こいつと勝負なー」


少年が取り出したのは意外な生き物だった。


少年B「俺のクワガタ!」


つまんだ、少年の指先には黒光りする虫が掴まれていた。

元G「ゴキブリじゃねーか…」

最悪の展開、シナリオだ。
きっとこれを書いてるやつは相当のド畜生か能無しに決まってる。


少年A「……。」


相方の友達まで、なにか言いたけだ。
これもう、俺たちは逃がしてもいいんじゃないかな。


少年B「じゃあ、そこにお前のカブトムシおけよー。」


子供らしいかわいい、しかし、こちらからしたら暗黒の微笑みをみせる。

ゴキブリがその台に紐をつけてのせられ、気づくと俺も紐をつけられのせられていた。
相対するゴキブリ。


腰抜G「ヒィィィ…カブトムシさん、すいません、すいません。どうか、命だけは…。」


とんだ腰抜け野郎だ。
どんな状況であろうと勝負は勝負。
相手を殺すぐらいの気持ちでかかれ、だなんてカブトムシ会では言われたなー…なんて。


少年A「ほら、いけよー!」


そういいながら、少年Aがお尻を小突く。
久しぶりのカブトムシの体だからって、回想に浸ってる余裕などありゃしない。
それに流石に今はそんな考えは持っていない。


腰抜G「ヒッヒィィィ…」


ゴキブリは相変わらず、ヒィヒィ言っている。
こいつはヒィとしか言えないのだろうか…。

見ない顔だが、もしかしたら俺の友達の友達とかそんな関係なのかもしれない。
そんなことを思うと、こんな情けないゴキブリでも、行動せざるにはいかなかった。

相変わらずお尻を小突いてくる少年に虫の恐ろしさを教えるべく、手にイガイガの足を引っ掛けながら登る。

少年A「イテテテテ!イッテ!」

変な声をだす、少年振り払われた瞬間、紐に括られた羽を広げて羽ばたくまではいかないまでも、強引に滑空する。

元G(とどけえええ!)

少年Bの手に見事着地。
同じように痛がり、思わずゴキブリのつながった紐を離す。

あの怖がりのゴキブリが勢いよく走り、逃げ去った。
よし俺も…と離れようとする。
しかし、上から背中をがしっと掴まれた。
上をみると少年の不満顔。


少年A「なんなんだよ、もう!」

少年B「俺のクワガタ…。」


どうやら、俺はまだ彼らと共に過ごさなければならないらしい…。


元G(ハァ…)


せっかく戻ったと思ったら、勝手に怖がるゴキブリをわざわざ助けた上に逃げきれなかった。


元G「なんだかなー。」


と思いつつ、目の前の景色がまた編み上の籠に包まれた。
2人の大きい声での会話がよく聞こえる。


少年B「お前のせいで逃げられたんだぞ!」

少年A「俺のせいじゃねえよ。そもそもあれ、クワガタじゃないだろ!」

少年B「クワガタだよ!」

少年A「どうみても、ゴキブリだったろ!」

少年B「え…。」


少年、あれはだれがどう見てもゴキブリだったよ。


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